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[映画鑑賞記] 若おかみは小学生!

2018/12/03

2018年10月16日鑑賞。

小学校6年生の元気な女の子・おっここと関織子は、突如、交通事故で両親を亡くし、祖母である峰子の営む旅館・春の屋に住むことになる。しかしそこには、幽霊のウリ坊が住み着いていた。このウリ坊が原因で、ひょんなことからおっこは春の屋旅館の若おかみとして修行することになってしまう。

初めはいやいやながらの修行だったが、峰子の手助けをしたいという気持ちや、様々なお客様と触れ合っていくに従い、若おかみとしての自覚を持つようになったおっこは、次第に春の屋を大きくするという夢を持つようになる。この物語は、おっこが様々な経験を経て、若おかみとして大きく成長していく姿を描いていく。(あらすじはwikipediaより)

SNSを中心にした盛り上がり

テレビシリーズを完走して満を持して劇場版の鑑賞となったのだが、なかなか劇場に足を運ぶタイミングがなくて、公開から約一カ月というギリギリのところで無理やり時間つくって観に行った。この時点で北九州の公開(2か所)はどちらも一日一回上映になっていた。ちょっとタイミングがずれたらどうなっていたことやら・・・

そもそも、初動があまりよくなくて、打ち切りになった劇場もあると言う話を聞く一方で、SNSを中心にした盛り上がりもあり、内心ヒヤヒヤしていたが、どうにか間に合わせることができた。

そうまでして「若おかみは小学生!」を見たいと思ったのは二つ理由がある。一つは、テレビシリーズの丁寧な作りに信頼がおけたこと。もう一つは劇場版をてがけたのが高坂希太郎監督だったからである。

基本テレビシリーズと劇場版は一部を除きスタッフも異なるのだが、制作スタジオは同じマッドハウス。そしてTV版のキャストもそのまま劇場ではスライド登板しているため、見た目に大きな差は見られない。

しかし、宮崎駿監督と長い間仕事を共にしてきた実力派アニメーターの高坂監督は、初の監督作でもある「茄子 アンダルシアの夏」(2003年)でその演出能力も高く評価され、同作は第56回カンヌ国際映画祭の監督週間に日本アニメとして初めて出品された作品となり、2007年には続編「茄子 スーツケースの渡り鳥」(オリジナルビデオアニメ)も作られている。

アニメ化は劇場版のほうが先

その「茄子 スーツケースの渡り鳥」以来11年ぶり(劇場アニメとしては15年ぶり)となる新作が「若おかみは小学生!」である。しかも短編だった「茄子 アンダルシアの夏」と異なり、初の長編作品でもある。

どちらも原作付きという事では変わらないが、「茄子」2作は、自身もアニメ界きってのサイクリストとして知られる高坂監督の趣味が全開になった作品だったのに対して、「若おかみは小学生!」はテレビ版をてがけた谷東監督の依頼で、キャラクターのイメージ制作にとりかかった縁からはじまったものである。いわば事実上「仕事」といっていい作品でもある。

ちなみに2018年春にスタートしたテレビ版はこの劇場版より後に制作されている。つまりアニメ化は劇場版のほうが先であり、基本テレビとのつながりはないに等しい。テレビ版は放送時間も15分であったし、長編として新たにストーリーを組みなおした劇場版「若おかみは小学生」については、ほぼ別物といっていいと思う。

高坂監督は宮崎監督のそばで長年にわたり右腕として活躍してきた方であり、宮崎ファンを公言してはいるけれど、宮崎監督の一番弟子という言われ方は好きではないそうだ。そんな愛憎入り混じった宮崎駿という才能が、かつて手掛けていた「児童文学」の世界を映像化する、というのはある種、宮崎監督と比べられても仕方ない部分があるわけで、これは相当な覚悟がいったと私は想像している。

そのうえで劇場版「若おかみは小学生!」を見ていくと、既存の声優さんに混じってそうでないキャストも混じっている。「茄子 アンダルシアの夏」でも主役に大泉洋さんを起用しているが、これは高坂監督が大の「水曜どうでしょう」ファンであり、その番組に出ている大泉さんを起用したという流れがある。

テレビ版との整合もあってメインのキャラクターの声は変えられなかったのだろうが、主人公おっこが住む「春の屋」にやってくるお客さんのキャストはほとんどが声優さんではない。唯一重要なキャラクターを「茄子」シリーズでも出演している山寺宏一さんが演じているのが特徴ともいえる。

絵は口以上にものを言う

個人的にジブリがなぜ声優じゃない人をキャストとして起用するのか?ということを考えてみると、アニメーションというのは本来絵が芝居して、絵が動くことが主であり、声で説明する部分は従であるという、古くは東映長編アニメで見られた概念が見え隠れする。

その流れを高坂監督も汲んでいると考えれば、劇場版とはいえあまりにクオリティの高い作画に圧倒されるのも頷ける話なのだ。まさに絵は口以上にものを言っているのが、劇場版「若おかみは小学生!」なのだ。

それもそのはず。スタッフロールをみれば、かつてジブリ作品で作画監督や原画をつとめたお歴々がずらっと名前を並べているのだ。そりゃ、おそろしいくらい動き回るよねという次第。

しかし根本的には原作をうまく掬いだして構成した脚本の吉田玲子さんの力量もまた見逃せない。テレビ版ではほぼスルー状態になっていた、おっこの両親の死と正面から向き合いながら、なおかつ原作が児童文学という枠から逸脱させることなく見事なバランスをとった物語は素晴らしいの一言に尽きる!

これを高坂監督がうまく映像化して、ちゃんと一本の完結した映画としてまとめあげている。まさにこれぞプロフェッショナルの仕事というべきものだろう。素人声優も気にならないくらい圧倒的な画力がここに加わったのだから、そりゃSNSで話題になるはずである。

児童文学だから見向きもしなかった層にはぜひ劇場に足を運んで体感してほしい。特にジブリ映画がOKな人だったら感動すること請け合いだろう。本当に素晴らしい映画だった!高坂監督の次回作にも大いに期待したいと思っている。

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