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[アニメソング] アニメ的音楽徒然草 白色彗星のテーマ

絶対的巨悪感

今回は「ヤマト2202関門地区公開記念」?で、オリジナル版「白色彗星のテーマ」をご紹介します。

もともとは78年公開の映画「さらば宇宙戦艦ヤマト愛の戦士たち」にて初出した曲ですが、これをなぜとりあげるかというと、実は初めてお小遣いを貯めて購入したアルバムが、この「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち 音楽集」だった事もあります。

購入の決め手はやはり荘厳なパイプオルガンの音色で、あまりに圧倒的な迫力に絶句した記憶は40年を過ぎてなお未だに忘れられません。あの絶対的かつ抵抗するにはヤマトすら非力に感じるくらいな巨悪感は、それまでのSFアニメ音楽の常識さえくつがえしました。

実は「さらば宇宙戦艦ヤマト」のサントラ盤はBGMオンリーのアルバムだったのです(短時間のものは収録されておらず、この収録曲から断片的に使用)。今だと考えにくいのですが、ヤマト第1作目の「交響組曲 宇宙戦艦ヤマト」が作品同様にヒットし、前作同様にステレオ録音されたアルバムでもあります。BGM集がステレオ収録された先駆けでもあったのです。

レコード会社の関係で「さらば宇宙戦艦ヤマト」のサウンドトラックには、テーマ曲である沢田研二さんの「ヤマトより愛を込めて」は収録されていません(インストゥルメンタル盤のみ)。

交響組曲 宇宙戦艦ヤマトとの大きな違いは、「さらば」が最初から劇中音楽として制作されたサウンドトラック盤だという点ですね。最初はTVアニメからスタートしたヤマトの第1作目は、後に再編集され劇場映画になりますが、「さらば」は最初から劇場映画として作られました。

苦戦したパイプオルガン

この「白色彗星」のテーマは、序盤の足鍵盤パートは、パイプオルガンが設置されている武蔵野音楽大学の教授が、中盤以降のパートは、宮川泰の息子さんであり、ヤマト2202の音楽を担当している宮川彬良さんが演奏されています。当初は別な方に演奏を依頼されたそうですが、断られたため、こういう編成になったそうです。

しかし、ピアノとロックオルガンが専門である宮川彬良さんは、勝手が違うパイプオルガンの演奏には苦労されたそうです。

音楽家とはいえ当時高校生の彬良さんにとって、父が「自信作」と推す「白色彗星のテーマ」を演奏することには重圧もあったことでしょう。実際収録では、彬良さんはテープがなくなるほどNGを出したという壮絶なエピソードがあるくらいですからね。

パイプオルガンとピアノの演奏方法がもともと似て非なるものである以上、当時のご苦労は想像に難くありません。結局サントラ盤はミスタッチなしに編集されていますが、さらば宇宙戦艦ヤマトの劇中BGMには、ミスタッチ版もそのまま使用されているそうです。これは音楽家としては屈辱でしたでしょう。

私のような音楽素人は、鍵盤さえあれば似たような演奏ができる、と思いがちですが、実際はロープのあるリングというくくりで行われるプロレスとボクシングくらい違うと推測すると何となく腑に落ちますね。

彬良さんが経験したであろう、父の傑作を形にできなかった無念は、2199や2202を担当することで、晴らすチャンスを得ました。

2202での白色彗星のテーマは

しかし、白色彗星のテーマは、オリジナルの存在が圧倒的すぎるせいか、第5章を見る限りではパイプオルガンバージョンは使われていません。これは白色彗星帝国のガトランティス軍が、リメイクによりイメージチェンジしたものにあわせたとのことですが、唯一無二のパイプオルガンの音色が劇場でそれほど聞けなかったのは残念でしたね。

実際はパイプオルガンバージョンの「白色彗星のテーマ2202版」があるだけに、もっと使ってほしかったなというのはありました。

とはいえ、2202が「さらば」でもない「ヤマト2」でもない着地点を模索しているならば、パイプオルガンの音色は使わないという選択肢もなくはないと私は思っているので、このあたりは悩ましいところですね。

第5章を見る限り、私には2202のガトランティス軍は、「さらば」や「ヤマト2」で描かれたような圧倒的巨悪感は感じられなかったですね。白色彗星帝国側のキャラクターを深掘りしたが故に、単なるリメイクにはしない、というスタッフの意気込みら感じられるんですが、70年代とは比べ物にならない現代のシアターにおける音響設備で、あの荘厳かつ絶対的なパイプオルガンの音色による「白色彗星のテーマ」を浴びてみたいというのも、私の偽らざる願いの一つではあるのです。

それかノスタルジーだと言われればそれまでですが、全てを新しくするなら「ヤマト」を名乗る必要もないわけで、大看板のリメイクゆえの苦悩はスタッフのみならず観客の内面にもいろいろ問いかけてくるのかもしれませんね。

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