[アニメソング] アニメ的音楽徒然草 地球にI LOVE YOU
2019/05/12
マッドマシーンとの関連性
今回は、1983年に放送された「特装機兵ドルバック」のオープニング主題歌、WELCOMEの「地球にI LOVE YOU」のご紹介です。特装機兵ドルバックというのは、wikipediaによると…
1999年、母星を失ったイデリア人は長い彷徨の末、ついに生存に適した星・地球を発見した。総帥・ゼラーはただちに地球侵略を命ずる。対する地球連邦軍では人間の着るパワードアーマー主体の戦力が、イデリア人の戦闘メカであるカングライドに対抗しきれないことを知り、苦悩していた。戦力に乏しいながらも地球連邦軍を圧倒するイデリア軍は、モンブラン山麓に拠点を設け、本格的に地球侵攻を開始する。そのような状況にあって、単なるレスキュー部隊と思われていた特殊部隊「ドルバック」が立ち上がった。
とあります。
私も勘違いしていたのですが、1981年の「戦国魔神ゴーショーグン」、1982年の「魔法のプリンセス ミンキーモモ(第1作)」放送終了を経て、次回作にアニメ誌などを賑わせていた「マッド・マシーン」が企画として浮上していました。
しかし、「マッド・マシーン」は企画自体別物らしく、ドルバックはドルバックとして、「マッド・マシーン」とは関係なく制作された作品だったようです。
最も制作は同じ葦プロダクション(現・プロダクション・リード)で、マッド・マシーンとドルバックの両方に名を連ねたスタッフが多かったこと、時系列的にマッド・マシーンの企画がポシャったタイミングでドルバックの制作が決まったため、私を含めた当時のアニメファンが勘違いしたわけです。
曲を聴くと作品が連想できる
とはいえ、ドルバックはややアダルト寄りな作風も引きずっていました。この当時は機動戦士ガンダムから始まったリアルロボットアニメの全盛期で、「宇宙戦士バルディオス」や「ゴーショーグン」でも既に高学年をターゲットにしていた葦プロがいよいよリアルロボット路線に足を踏み入れた作品だったとも言えるでしょう。
うろ覚えで申し訳ないのですが、ドルバックの主人公・無限真人の設定画にタバコを加えているものがあり、当時真人役の古谷徹さんが「大人の役ができる」と意気込んでおられたように記憶しています。ただ、ドルバックの中で真人が喫煙している場面は今でも思い当たらず、しかも真人ってキャラクターとしては、古谷さんがアムロ・レイ以前に多く演じておられた熱血漢でしたからね。
さて、「地球にI LOVE YOU」に関しては、以前ご紹介した「えびてん」の第1話エンディングに使われています。また海外では人気があるというエンディングの「君に贈るララバイ」は、外国でカバーされてもいるそうです(たしかスペインだったと記憶していますが間違っていたらすいません)。
80年代アニメにありがちな話なんですが、アニメ本体と切り離しても曲として楽しめるテーマ曲がたくさんありました。ドルバックのオープニングとエンディングも然りで、70年代にあった主役メカの名前を連呼しておりませんし、昨今のアニソンのように、作品内容に寄り添ってもいません。
しかし、80年代は最低半年から一年という単位で作品が作られており、またテーマ曲がクールごとに煩雑に変わるということもありませんでした。「うる星やつら」や富野監督作品など、テーマ曲を変える作品も現れはじめてはいましたが、まだ主流ではありませんでした。
特装機兵ドルバックの場合、3クール39話が放送されまして、その間ずっと「地球にI LOVE YOU」と「君に贈るララバイ」が流れ続けていたため、この二曲を聴くとドルバックを否が応でも連想してしまうわけです。歌詞の内容が作品に寄り添っているわけでもないのに、曲を聴くと内容が連想できるという意味では、今のアニメと違う大きなポイントといえるでしょう。
ベスト盤に大概収録されている
しかしながら、もともとの楽曲がよくなかったら後世には残りません。「地球にI LOVE YOU」はビクターから発売されていましたが、ドルバックに関してはビクター系列から出ているアニソンのベスト盤に大概収録されてます。このあたりも大きなポイントの一つだと私は思っています。
特装機兵ドルバックの音楽は、ギタリストの幾見雅博さんが担当しています。幾見さんはスタジオミュージシャンの傍ら、さまざまなCMや映像音楽を手がけてこられた映像音楽家で、「地球にI LOVE YOU」と「君に贈るララバイ」のアレンジも幾見さんの手によるものですね。
特に「地球にI LOVE YOU」のイントロで流れる独特なギターサウンドは非常に特徴的で耳馴染みがよく、イントロを聴いただけでドルバックだなあ、と思わせるアレンジですね。
特装機兵ドルバックは、巨大ロボットアニメをたくさん手がけてきた葦プロが、リアルロボット路線に参入してきた画期的な作品でしたが、ドルバック放送終了後に作られた「超獣機神ダンクーガ」にしろ、「マシンロボ・クロノスの大逆襲」にしろ、リアルロボット路線の香りは残しつつ、巨大ロボットや、いわゆるおもちゃ路線に回帰していきます。
特装機兵ドルバックのメインスポンサーだったタカトクは、放送中の1984年に倒産し、プラモデルを販売していたグンゼ産業(現:GSIクレオス)は、キャラクターものをドルバックだけで終了し、2007年に金型を引き継いだアオシマが再発売していますが、同じようにスポンサーの倒産を経て、バンダイに拾われた機動戦士ガンダムとは対照的ですね。
このあたりは作品のもつパワーに差があったとしかいいようがないですね。後年スカパー!で再放送されたことにより、全36話がDVD-BOX化されましたが、やはりタイミングを逸していたとしかいいようがなく、今でも根強いファンがいるものの、ドルバックは、ガンダムほどはメジャーになりきれなかったのかもしれないですね。