[アニソン] 人形劇的音楽徒然草 ギャラクティカ・スリリング
国営放送ならではの理由
今回は超マイナーなところから「地球防衛軍テラホークス」のオープニング主題歌である「ギャラクティカ・スリリング」をご紹介します。超マイナーとはいえ、本放送時は天下のNHK総合で火曜の19:30〜20:00(20話からは、水曜18:00〜18:30)にオンエアされていましたから、ゴールデンタイムの全国ネットで放送された作品です。
で、人形劇なのに、なんでアニソンのくくりに入れているのか?というと、これが民放ではなく、国営放送ならではの理由があるわけです。
そもそもテラホークスというのは、1977年に、日本の東北新社が英国で製作は操り人形を用いた特撮映画やテレビシリーズを多く製作していた、ジェリー・アンダーソン率いるアンダーソン・パー・ピクチャーズに、アニメの企画を依頼したところから始まっています。
企画段階ではサンダーホークスという名前でしたが、日本のスタッフを中心に「地球奪還指令テラホークス」と改題されました。
ウィキペディアによると、
監督に『勇者ライディーン』、『長浜ロマンロボシリーズ』の長浜忠夫、デザインに『勇者ライディーン』、『超電磁ロボ コン・バトラーV』、『無敵超人ザンボット3』の安彦良和、ブレーンにSF作家の豊田有恒、石津嵐、脚本家の鈴木良武、田口成光などが加わって進行したが、当時の日本は「スター・ウォーズ」を嚆矢とするSFブームの到来前であり、時代を先取りしたがゆえにセールスがうまくいかずに結果として流れてしまう(なお安彦良和がデザインしたテラホークスのコスチュームのデザインは『機動戦士ガンダム』の地球連邦軍の制服にモディファイされている。
数年後ジェリー・アンダーソンは、日本のアニメ企画とは無関係に、テラホークスの題名をそのまま使い、新しいパートナーで出版会社出身のクリストファー・バーとともにプロダクションを起こして、クリストファーの発案で"THUNDERHAWKS"を人形劇として製作した。それが本作である。日本の水準では高額な予算ながら、アンダーソンの意図としては低予算作品として製作された。
とあります。
紆余曲折を経て、人形劇に
このように紆余曲折を経て、人形劇として「テラホークス」は放送されました。しかし、先程も述べたように、イギリスでは民放で放送されたテラホークスが日本ではNHKが放送することになったわけです。
ということは、CMが入らないため本編の尺が足らないわけです。そこで、この足らない尺を埋めるために、日本語版では、アニメパート(演出・出崎哲監督)のオープニングとエンディングが作られたわけです。このアニメパートのオープニングが「ギャラクティカ・スリリング」だったわけです。
皮肉にもアニメ企画としてスタートしたテラホークスがNHKで放送されたがために、人形劇でありながら、アニメ版のオープニングとエンディングができた、という大変珍しい例になったのです。
ちなみに、イギリスで放送されたテラホークスのオリジナルオープニングも放送されていたため、テラホークスは一つの番組に2つのオープニングが存在するというこれまた珍しい例になったのです。
しかしながら、テラホークスの放送は成功したとは言いがたく、視聴率云々は関係ないはずのNHKで、放送時間を移動させられてしまいます。その原因をいくつかあげてみましょう。
①作風が日本の視聴者に受け入れられなかった。
②作品の対象年齢に乖離があった
③路線変更の失敗
タイミングの悪い時期に放送された
①は、ジェリー・アンダーソンの狙っていたテラホークスの作風が、サンダーバードに寄せた、時にコミカルで時にシリアスな感じで作られていました事にも起因しています。
しかし、1983年にテラホークスが放送された当時は、ヤマトやガンダムなどリアルメカ路線が主流になっており、ややコミカル路線のテラホークスが、ひと昔古いイメージで捉えられたように思います。
②は、ジェリー・アンダーソン自体、高学年を対象に作品を作っていたのですが、配給の東北新社もNHKも低年齢向けの放送を意図しておりました。その割にはオープニングの「ギャラクティカ・スリリング」にしてもエンディングの「大切な言葉(ワン・ワード)」にしても、とても低学年層にアピールするような楽曲ではありませんでした。こうしたターゲット層の乖離も低視聴率を招いた一因だったのでしょう。
③の路線変更については、第9話から、羽佐間道夫さんがナレーターとして参加し、コミカル路線に拍車をかけたのも、結果的にテコ入れ失敗という結果になりました。個人的に羽佐間道夫さんの軽いナレーションは大好きなんですが…。ちなみに、オリジナル版テラホークスにはナレーター自体が存在していません。
いずれにせよ、地球防衛軍テラホークスは、戦略的にも時節的にもタイミングの悪い時期に放送されたとしか言いようがありません。
ヴォーカルを担当している燕奈緒美、真由美さんは双子の姉妹で、アニソンとしては、手塚治虫先生の「ワンダービートS(スクランブル)」の主題歌も担当しています。これ以前ですと、「リリーズ」名義で「好きよキャプテン」というヒット曲も持っている実力派のヴォーカリストです。
ちなみに、私はギャラクティカ・スリリングと大切な言葉の入ったテラホークスのLPアルバムを持っています。当時、アニソンをたくさん手がけられていた新田一郎さんの手によるもので、これも本編とは相入れない非常にカッコいいホーンセクションが魅力の音楽集なんですが、いかんせんテラホークス自体が幻の番組と化したため、私が知る限りこのアルバムはCD化されていないと思います。
まあ、でも元々の経緯や路線変更も含めてブレまくっていたテラホークスは、今後も幻の作品として扱われていくのかもしれません。