[心理×映画]映画鑑賞記・千年女優
05年4月19日鑑賞。
芸能界を引退して久しい伝説の大女優・藤原千代子は、自分の所属していた映画会社「銀映」の古い撮影所が老朽化によって取り壊されることについてのインタビューの依頼を承諾し、それまで一切受けなかった取材に30年ぶりに応じた。
千代子のファンだった立花源也は、カメラマンの井田恭二と共にインタビュアーとして千代子の家を訪れるが、立花はインタビューの前に千代子に小さな箱を渡す。その中に入っていたのは、古めかしい鍵だった。
そして鍵を手に取った千代子は、鍵を見つめながら小声で呟いた。
「一番大切なものを開ける鍵…」少しずつ自分の過去を語りだす千代子。しかし千代子の話が進むにつれて、彼女の半生の記憶と映画の世界が段々と混じりあっていく…。(あらすじはwikipediaより)
物語はかつて銀幕を飾りながら引退した女優の一生を、その出演作を絡めながら、自らの口から語るというもので、実際にその世界に入ってしまうことで、インタビュアーが狂言まわしになるというスタイル。
過去と現在、虚像と実像がごちゃ混ぜになっていくのだが、老人が記憶を頼って順不同にしゃべっていて、それでいてリアルであること、インタビュアーが女優のファンにして、過去に因縁があったことなどが実に盛りだくさんに入れられている。
こういうスタイルは、実写映画でよく見られる手法。ただし、こういう風に虚実、過去現在がめまぐるしく交錯していくスタイルをそのまま実写でやっていくと、どうしても語り口がくどくなりがち。 それがしつこく感じないのはアニメならではとも言える。
手法と絵が実写に近い事で、アニメファンからはリアル過ぎると敬遠され?、映画ファンからは実写でやればいいのに、といわれているそうだがしかし、実はこれほどアニメの特性を理解して作っている監督はそうはいないと思う。そこをわかって見ていないと正しい評価は出来にくいんじゃないだろうか。
これはやはり「アニメならでは」の作品なのだ。
同年制作のオトナ帝国の逆襲といい、実にしっかりした映画が多数作られている2001年。
結局世間的に評価を得たのが「千と千尋」だけだったというのがなんとも歯がゆい気がする。豊作というのは同時に名作が「かぶって」しまっていることでもあるわけで、つくづく勿体ない話しではある。