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[心理×映画] 映画鑑賞記・銀河鉄道の夜

05年4月17日鑑賞。

主なスタッフは杉井監督をはじめ「あらしのよるに」を作ったメンバー。

内容とは直接は関係ないけど、昔営業で回っていたとき、車の中で待ち時間が出来てしまった事があった。あれは彦島の町の裏手の方にいたときだったか...回りには街頭の薄暗い光しかなく、闇に包まれた中、車中でこの映画のサントラをかけていたら、黒の空の中に吸い込まれていきそうな
何とも言えない感覚を味わったことがあった。

それをふと思い出した。

映画自体は劇場で一度、テレビ放送で一度見ていて、今回が3回目。確か小倉まで見に行ったっけ。冒頭の文部省特選という文字に嫌悪感を持ったなぁ...振り子のように画面が揺れながら、空の俯瞰から学校へカメラが入っていく導入部は何回見ても好きな場面。

声の田中真弓さんと坂本千夏さんの押さえた名演も素晴らしい。

公開当時は人間のキャラが出てくることに対しての賛否両論があったことを記憶している。また後日知ったことだがこの映画の影響で、宮沢賢治の原作も猫のキャラだと勘違いする人も多かったらしい。

今回改めて見たがそれほど気にならなかった。むしろ全編に溢れる宮沢賢治の思想が、今見るとこの時代には少々きれい事過ぎるような感はしないでもない。作者の理想だったのだから仕方ないけど。

いや、こんな時代だからこそ敢えて今見ることが必要だったのかもしれない。見ていくにつれ、ファンタジー空間の向こうにある、賢治の暮らした当時の、厳しい東北の現実の景色が浮き彫りに感じられるような気がしてきた。

異世界でありながら、物語の裏に張り付いた日本の原風景。これを絵にすることはとても難しいと
思うのが、それに挑戦してよくここまでのものを作ったものと感心する。

激しい感動はないけど、見れば見るほど味がある映画である。

-映画鑑賞記