
8年半の体験談を告白しちゃいます。もとカーディーラーセールスマンの体験談ブログ 私が乗ったカーレビュー
8年半の体験談を告白しちゃいます。もとカーディーラーセールスマンの体験談ブログ(41) 私が乗ったカーレビュー・MR2編
2016/10/30
私がディーラーに勤めていて良かったと思える数少ないことの一つにミッドシップ車を操縦できたことでした。ミッドシップというのは車体中央にエンジンを載せた車のことで、車体で最も重いエンジンを中央に据えることで、安定した走行を実現しています。欠点は車体中央にエンジンがあるため、トランクルームや、室内空間が制限されることですね。ですからスポーツカー向きなんです。レース専用マシンは市販車を改造、流用したものでない限りは大概ミッドシップ車です。
当然ですが、ドライブを楽しむための車ですから、大人数は乗れません。平成初期からワゴン車のブームが始まり、人数の乗れないスポーツカーはだんだん敬遠されていき、やがて金持ちの道楽へと変化していきます。MR2にしろ、スプリンタートレノにしろ、こうしたライトスポーツカーを実際に触り、販売していたといのは、確実に私の財産になっていますね。MR2は中でも新旧型の両方に乗ることができました。我ながら運が良かったと思います。
旧型MR2は1.6リッターのエンジン、新型は2.0リッターエンジンを搭載しており、コンセプト自体も異なる車と考えて良さそうです。1.6リッターでは、先行して既にスプリンタートレノがありましたから、走りと室内をとるならフロントエンジン、フロントドライブのトレノ。少人数でも走りを極めたい人にはMR2という、車好きにも選択肢の幅があったよい時代でした。
旧型MR2は当時の整備主任が乗っておりました。この人、尖っていたガチガチの機械職人みたいな人間でしたから、暇さえあれば、裏の駐車場で古い車をいじっているような、ちょっと変わり者ではありましたね。
この変わり者の主任は、自分が勤務しているディーラー、メーカーの車は一切買わず、他社車ばかり中古で購入していたのです。営業なら許されざるところでしょうが、彼みたいな存在が許されていたのも昭和末期のゆるさ特有だったのかもしれません。
この整備主任がはじめて自社車を新車で購入したのが旧型MR2でした。偏屈な職人のこだわりがあったせいか、このMR2は実に走る車でした。一回なぜか話の流れで峠を攻めることになったことがありました。主任の運転は荒いものではないことは承知していましたが、山道を抜けていくMR2は実にふらつかず綺麗にコーナーを曲がっていく優秀なドライビングカーでした。
一方新型MR2は、私個人がお客さんに販売した経験があります。飛び込み訪問で仲良くなったお客様で、懇意にしていただいたので、割とよくハンドルもにぎらせていただきました。新型MR2の出始めは前輪と後輪のタイヤの大きさが異なっていました。地を這うようなデザインゆえかもしれませんが、若干足回りの面でユーザーやモーターファンから不満があったのも事実です。実際このお客様も、その点は不満があるといわれてました。そのせいか、マイナーチェンジ後はタイヤサイズも後輪と同じになり、足回りも改善されました。
この特徴的な地を這うデザインは、運転席に座るとまるで寝そべるような感じになるのも独特でした。私が中学生のころブームだったスーパーカーを彷彿とさせる感覚を、手頃な値段で体験できたのは確かに今思うと貴重な体験だったのかもしれないですね。
MR2は二代限りでMRSにバトンタッチして役目を終えました。この独創的なミッドシップスポーツカーは、車を楽しむことの素晴らしさを私に教えてくれた気がします。