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[映画鑑賞記] LUPIN THE ⅢRD 峰不二子の嘘

2019/07/22

2019年7月18日鑑賞。

ハードで危険な『LUPIN THE ⅢRD』シリーズ、待望の第3弾はそんな峰不二子に絶体絶命の危機が迫る『LUPIN THE ⅢRD 峰不二子の嘘』だ。

主演は2011年より峰不二子の声を担当する沢城みゆき。強くてキュートな不二子を魅力たっぷりに演じている。ルパン三世役はもちろん栗田貫一。長いキャリアで硬軟自在に「生きたルパン三世」を現出させる。

制作には『LUPIN THE ⅢRD 次元大介の墓標』『LUPIN THE ⅢRD 血煙の石川五ェ門』を生んだトップクリエイターたちが再集結した。監督を務めるのは、スタイリッシュかつハードな演出で、国内外から高い評価を得る小池健(『REDLINE』)。
脚本は「ルパン三世 PART4」でシリーズ構成・脚本を務めた高橋悠也(『仮面ライダーエグゼイド』)。音楽はCM・映画音楽で活躍するジェイムス下地(『REDLINE』)。アニメーション制作はテレコム・アニメーションフィルムが担当し、浄園祐がプロデューサーとしてプロジェクトをまとめ上げる。またテレコムのトップ・アニメーター友永和秀、横堀久雄らも原画に参加している。

愛し、惑わし、刺し、奪う――
峰不二子の魅力を存分に体感することになるだろう。(公式HPより抜粋)

今までにはない新しい描写

個人的には、テレコムアニメーション×小池健監督のこのシリーズは非常に好みであり、アダルトな原作テイストである作画と相まって、見応えあるシリーズだと思っている、

ただいかんせん上映時間が60分と短く、個々のキャラクターだけで展開していくので、物語の重厚さに欠ける面がある。何よりこのシリーズが繋がって完結したときに改めて再評価したいとは思う。

ただ、「峰不二子の嘘」を単体作品としてみると、やや物足りない出来になっているように、私には感じられた。いわばテレビシリーズの番外編エピソードのような感じで、この内容を劇場で見るという価値が今ひとつ見出せなかったのである。

アダルトテイストな画面とは裏腹に、様々な情念の振幅が弱く、ストーリーもある程度予測できる展開で、いい意味での裏切り感がない。また全体的な魅力やスケールが欠けるので、映画としての評価はどうしても厳しめになってしまうのだ。

テーマまでのプロセス

「峰不二子の嘘」は、今まで語られてこなかった不二子の母性をメインテーマに物語が進んで行くのだが、本作の若い時代(と思われる)不二子が、美貌という武器が通用しない子どもという存在に四苦八苦する演出が今までのシリーズにはない新しい描写だったと私は思う。

これにより豊かな峰不二子像が浮かび上がる。敵の男を手玉にとるための武器として、色気や美貌だけではなく、母性もエッセンスとして加えることで、数々の男たちが魅了されているわけである。

ただ、母性をテーマにしたときに、そこにたどり着くまでのプロセスが「峰不二子の嘘」には、決定的に物足りない。

本作の不二子はのらりくらり身をかわしていくうちに母性を武器にした感じで、自らのアイデンティティを掴み取ったというようなガツガツした飢餓感みたいなものが、どうにも感じらない。これでは峰不二子の母性を描ききれたとはいえないだろう。お宝は何が何でも自分のものにしたいという峰不二子の「欲望」は、偶然手にした武器で満たされるものではないはずだからだ。

ビンカムの強敵感が・・・

また、感情がない殺し屋・ビンカムを物心がつく前の子どもに見立て、母性愛を武器に立ち向かうという構図も不二子の成長が見てとれる。ただ、オカルト的な能力を操るビンカムは、原作にも出てきそうな感じで雰囲気もよいのだが、もう一つ魅力的にみえない。いわゆる「強敵感」が薄いのだ。

ビンカムはミステリアスな割に、あっけなく不二子に手玉に取られすぎだし、異能力者の割に、手下のように使われているあたりも根拠が明確に描かれていない。その結果、スピンオフに在りがちな、キャラの意外な一面で味付けすることも、在り来たりにならざるを得なくなってしまった。これについてはなんとも惜しまれてならないのである。

それでも、短いシーンでシリーズの繋がりを予見させることが悪くないのが救いで、アクションシーンの見せ場は少ないものの、高いクオリティの作画は、さすがの小池作品。そしてルパン三世の劇場作品を短い期間で絶やさず公開するという企画は評価されてしかるべきだろう。

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