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[映画鑑賞記] 文豪ストレイドッグスDEAD APPLE

2018/12/03

はじまりは、6年前。あらゆる組織を巻き込み血嵐吹き荒れた88日間の「龍頭抗争」は、ヨコハマ裏社会史上最多ともいわれる死体の山を積み上げることとなった。ポートマフィアの盟友である中原中也とともにその死線をくぐり抜けた太宰治が、亡き〝友〟の言葉を懐いてボス・森鴎外と決別し、新たな場所に己の生を見出したのは、それから2年後のことである。

福沢諭吉の理念のもと創設された武装探偵社は、新たに中島敦、泉鏡花を社員に迎え入れ騒がしくも平穏な日常を過ごしていた。しかし、そのころ世界各国では異能力者が相次いで自殺する怪事件が発生。なんと500人を越える異能力者たちが、自らの力により命を断っていたのだ。現場には、いずれも不可解な「霧」が発生していたという。内務省異能特務課は、一連の事件を「異能力者連続自殺事件」と命名。坂口安吾より依頼を受けた武装探偵社は、事件への関与が疑われる男の確保へ乗り出す。対象の名は、澁澤龍彦。「コレクター」と呼ばれる、謎に包まれた異能力者だった。
なんらかの思惑を持ちヨコハマに潜伏する澁澤であったが、そこには、さまざまな事件に暗躍する魔人・フョードルの姿が見え隠れし……。ヨコハマの街が、恐ろしい悪夢に飲み込まれようとしていた。

異能力者たちに次々と襲い掛かる、かつてない強敵。そんななか、太宰が消息を絶ってしまう。国木田独歩の指揮下「首謀者の排除」という厳命を受けた敦は、鏡花をともない敵の居城へと走る。だがそこへ立ちふさがる、ポートマフィアの芥川龍之介。宿敵・芥川が告げた、敦の思いもよらぬ真実とは?また同じころ、中也は仲間を失った過去の悔恨を胸に仇と対峙していた……。

退屈した世界に終止符を打つがごとくあらわれた澁澤、闇にうごめくフョードル、そして、霧に消えた太宰。先の見えない霧闇のなか、古き過去より絡み合う因縁の赤い糸が紡ぐ物語の行方は――(あらすじは公式HPより)

文豪ストレイドッグスの賛否

偉人や歴史上実在した人物をモチーフにしたアニメやゲーム、マンガにはさまざまな意見があって、だいたい賛否両論巻き起こる。この文豪ストレイドッグスにもやはり両論がつきまとう。私は、文豪ストレイドッグスのようなアニメ化によってもたらされるメリット、デメリットは次の二つだと思っている。

①メリット…アニメ化などで知ったキャラクターのモデルになった文豪を知るよい機会になる

②デメリット…アニメ化などで、あまりに元ネタとかけ離れたイメージが定着してしまう危惧。

①は、現実に与謝野晶子記念館などが、文豪ストレイドッグスとコラボすることで、集客アップにつなげており、ファンも原典である文豪に興味を持ち出している現象が実際に見られている。

一方で

②の危惧は主に実在した文豪のファン、もしくは作品の愛好家から発せられることが多いように、私は思っている。まあ、お気持ちはわからないではない。彼らにとっては文豪ストレイドッグスも「原作レイプ」にあたるのではないか?という捉え方になるのだと思うし、実在の人物をモデルにした以上、避けては通れない問題ではある。

設定の違いを楽しんでみる

私個人は文豪ストレイドッグスという作品は、異能力バトルもの+主人公成長物語という捉え方でずっと観てきた。元ネタの文豪も、その作品もひと通り触ってきた上で、別物として捉えたのだ。山口県民的には、中原中也のキャラクターが一番例としてあげやすいかもしれない。文豪の中原中也は、成績優秀で、戦闘的でありながらひょうきんなところがありクラスの人気者だったといわれているのだが、ストレイドッグスの…特にDEAD APPLEでの中原中也は、いわゆるオラオラ系ヤンキーっぽい性格で、仲間を大事にするキャラクターとして描かれている。

まあ、人それぞれではあるけれど、実在した文豪と、ストレイドッグスに登場する文豪の名を模した異能力者たちのキャラクター設定の違いを楽しんでみるのも悪くはない。

実際、アニメを含めたストレイドッグスの「文豪たち」は、概ね実在の文豪に寄せているわけではないし、異能力バトルという話の性質上、オリジナルに準拠したキャラクター設定だと、私は成り立たないのではないか?とさえ思っている。そもそも文豪ストレイドッグスでは、泉鏡花など性別すら変わっているのだが、中島敦と関わりがある点は残されているし、先述の中原中也は性格設定すら変わっているが、声優を務めているのが、同じ山口県出身の谷山紀章さんというのも興味深い。

全く別物ではないけど、特徴やおおまかな部分に共通項がある分、そこから文豪に興味をもつファンが現れる一方で、原典の文豪のファンの一部から忌み嫌われることは、文豪ストレイドッグスの宿命なのかもしれない。

大迫力の異能力バトル

DEAD APPLEは、原作者朝霧カフカ、脚本・榎戸洋司、監督・五十嵐卓也の三氏によるオリジナル作品で、実際にミーティングを重ねて作り上げたストーリーになっている。見所はなんといっても、異能力者たちが自身の異能力とバトルするシーンで、自らの異能力と対峙することで、それぞれのキャラクターが成長したり、葛藤したりする部分になるだろう。

ただし、ストレイドッグスでは、普段から行動が不確かな太宰が、本作DEAD APPLEで敵陣についている。これは「多分途中で裏切るんだろうな」と思っていたら、その通りだった。また、二期で海外の異能力者とバトルした分、映画としてのスケール感はやや小さいし、意外性もそれほどない。


それでも大迫力のスクリーンでみる異能力バトルはさすがボンズと言わざるを得ないくらいに作画・演出とも傑出しており、これだけでも観に行く価値はあると私は思う。アニメからファンになったひとにとっては、それぞれの推しキャラに大なり小なり活躍の場面が与えられているので、大画面で単純に楽しむこともできるかもしれない。

また、一見さんでも比較的わかりやすく関係性が丁寧に描かれているので、興味のある方は、是非見ていただきたい。もしDEAD APPLEで文豪ストレイドックスの世界に興味をもってもらえたら、テレビ版一期・二期も併せてご覧いただけるといいかもしれない。アニメや漫画を入り口に、原点の文豪に興味を持つ人がいるように、どこかの入口から文豪ストレイドックスを知って、ご自身の興味の幅を広げていくきっかけになれば、それは素敵なことではないかと私は思っているからだ。

 

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