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[プロレスコラム]プロレス想い出回想録 一流の紳士・マサ斎藤伝②

2019/01/22

私的ベストバウト

前回に続いてマサ斉藤伝。今回はマサさんの私的ベストバウトをあげてみようと思う。

巌流島の決闘。海賊男の乱入した大阪、ラリー・ズビスコからAWA世界タイトルを奪取した東京ドーム。そして引退試合となったスコット・ノートン戦・・・。

マサ斎藤さんの追悼記事で一通り触れられている、代表的な試合はこの4つ。私も異論はないのだが、語り尽くされた感も否めない。そこで極私的ではあるのだが、今回はマサさんのベストバウトをあげてみようと思う。その試合とは・・・・

1993.1.4 超戦士IN闘強導夢 第5試合 新日本vsWCWタッグマッチ 30分1本勝負
○ダスティ・ローデス&ダスティ.ローデスJr.(片エビ固め、14:23)マサ斉藤&キム・ドク●

この超戦士IN闘強導夢は、私がはじめて東京ドームでプロレス観戦した思い出の大会。そして「1.4」で最初に行われたドーム大会でもある。前年のスターケードIN闘強導夢に続き、WCWのスーパースターが大挙参戦していた大会だが、試合内容は新日本寄りというか、日本人選手が外国人選手を迎え撃ってやっつけるという、オールドファッション・ストロングスタイルな感じのものばかり。悪くはないけど、正直スタンド席には届かない試合ばかりだった。

しかし、この第五試合はその中でも異質なタイプの試合だった。どう異質だったか?それは日本がホームのはずのマサ&ドク組が悪役で、ローデス親子がそれをやっつけるヒーローとして展開したからだ。

アメリカならばこの図式で試合が成り立つ。実際、マサさんにしろ、キム・ドクこと、タイガー・チャン・リーとしても名高いタイガー戸口さんにしてみれば、日系悪役というのは、得意分野なわけだ。

直輸入アメリカンプロレス

しかし、日本でそれをやるとどうだろう?今でこそ日本人、外国人問わずベビーにもヒールにもなれるし、場所を問わず声援も集まる。だが、90年代といた方のは、日本でなら日本人がベビーフェイスで、外国人がヒールという固定観念にまだまだ支配されていた時代だった。

実際、この超戦士IN闘強導夢は、日本人がベビーフェイスになる試合ばかりだった。だから私は大会自体は非常に単調に感じていた。そこへ、敢えてアメリカ直輸入の図式を持ち込み、自らが悪役になることで、ローデス親子の個性を生かし、なおかつ自分の得意分野で勝負に出たマサ・ドク組の姿勢に私は驚かされた。

グレートカブキさんによると、マサさんの得意技の一つである「捻りを加えたバックドロップ」こと「サイトースープレックス」は、マサさん自身、受け身に難がある外国人選手には、使うのをためらっていたそうだ。自分のこと以上に相手のことを思うマサさんのこのエピソードからは、ドーム大会でダスティ親子の特性を生かした、マサさんの心情をうかがい知ることができる、と私は思っている。

結果、この第五試合は全大会中でも超異色な本場アメリカンプロレスになった。ダスティ・ローデスのベビーフェイスぶりも半端なかったし、まだキャリアの浅かったローデスジュニア(現・ゴールダスト)も、必死になってベテラン勢に食らいついていった。

日本でまさか本場のアメリカンプロレスがみられるなんて思いもしなかったから、私は東京ドームで驚喜乱舞したのを未だに忘れられない。

名選手としての職人芸

考えてみれば、1979年のオールスター戦で夢のトリオ(ジャンボ鶴田&藤波辰巳&ミル・マスカラス)が結成された試合でも、対角線上にはマサさんがいた(マサ斉藤&高千穂明久=ザ・グレートカブキ&キム・ドク=タイガー戸口)。武藤敬司がグレートムタでブレイクした後、凱旋した1990年4月のNKホールでのIWGPタッグ戦(武藤敬司&蝶野正洋対橋本真也&マサ斉藤)でも橋本真也とともに、武藤の相手を務めたのがマサさんだった。

マサさんは相手を光らせる天才でもあった。それはパンプアップされた肉体、受けの強さ、五輪代表にもなったレスリングテクニック、強いハート、そして他者を思いやる気持ち・・・・すべてが兼ねそろった名選手だったからこそできた偉業だと私は思っている。

私にとって、ローデス親子との試合は、未だに忘れがたい名勝負の一つになっているのも、たぶん名選手としてのマサ斉藤さんの職人芸があったからだろう。そのベースは日系悪役としてアメリカで築き上げられてきたもの。

ダスティがマサさんをコーナーに追い詰めて、マサさんが手を前に出して「待ってくれ」と懇願する(でも手を緩めると、即座に反撃する。リック・フレアーも使っていたおなじみのムーブ)あたりは、アメリカンプロレスの真骨頂であり、ストロングスタイルではありえなかった光景だった。

そんなアメリカンプロレスと新日本を結びつけたマサさんの功績は、もっと後世に語り継がれてしかるべきものではないだろうか。私は今でもそう思っている。

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