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[プロレス人物伝] プロレススーパー人物列伝 冬木弘道②

2018/01/25

超闘王の再生

前回は、冬木さんの歴史的視点からその功績を考えてみました。今回は私が目撃した試合の数々から、冬木さんのレガシーを考えてみたいと思います。

私が考える冬木さんの功績で書き忘れていたもの。それは、やはりあの超闘王・北尾光司(光覇)を、本当の意味でプロレスラーにしたことだと思うのです。それもヒールではなく、ベビーフェイスとして。

北尾選手は大相撲の横綱にまで上り詰めながら、トラブルで相撲界を追われ、スポーツ冒険家を経て、プロレス入りします。デビューは、あの全日本と新日本が交わった歴史的一日になった90年2月10日の東京ドーム。相手はプロレス巧者として名高いクラッシャー・バンバンビガロでした。

しかしながら、アメリカンスタイルな出で立ちと、物議を醸し出した試合をしたことによって、北尾選手はお客さんから天然ヒールの認識を得ます。それがマックスにきたのが、SWS時代に、対ジョン・テンタ戦で言い放った「この八百長野郎!」発言ですね。これによって北尾=プロレスの敵という構図は完成したわけです。

これを上手く利用したのがUWFインターナショナルで、高田対北尾戦において、リアルヒールの北尾選手を高田選手が破ったことで、当時のプロレスファンの溜飲をさげました。

見た目が不快だから

しかし、見方を変えると、この試合は、Uインターが北尾選手を使い捨てにしたとも言えるわけです。冬木さんの鋭いところは、北尾選手のナチュラルヒールとしての才能を見出しつつ、北尾選手が当初思い描いたであろう「ベビーフェイス」として再生させた点です。

デビュー時の北尾選手は側から見る限りにおいては「勘違い野郎」だったと私も思います。見た目に不快な感じのヒールというのは、実をいうと北尾選手の登場以前はそんなにいませんでした。

さて、90年代は新日本対WARの対抗戦も花盛りでした。私の印象では当時の新日本ファンにうけいれられていたのは、天龍選手とウルティモドラゴン選手くらいで、ほかのレスラーは、ひたすら容赦ないブーイングを浴びせられていたのです。

90年代、格闘技ブームの勃興以前、新日本最強説を信じているファンはまだいました。特に全日本の流れを組むWARには、あんこ型の体型の選手が多く、新日本系のファンは「練習していないからだ」と断じて、容赦ない罵声をあびせていました。実際、この対抗戦を何度となく生で体験してきた私自身、WAR勢にとぶブーイングの類を聞いたのも一度や二度ではありませんでした。

要するにWARの選手も北尾選手同様、「見た目が不快」だからヒールにされたわけです。もちろんその中に冬木さんも含まれておりました。毎回飛び交うブーイングの渦中にあった冬木さんは、ある日思い切った行動にでます。傘下に邪道・外道を従えた形で冬木軍を結成。新日本にもWAR本隊にも反旗を翻しました。

ホームリングなのに・・・

そして、北尾選手が武輝道場を率いて、SWS以来、久々に天龍選手の元に再合流してきます。当然、武輝勢は全方位に喧嘩を売った冬木軍とも敵対します。

通常ならWARは冬木さんのホームリングなんですが、ここで冬木軍は武輝道場にも容赦なくヒールファイトを仕掛けていきます。おかげで北尾さん以外の武輝道場のメンバー(望月成晃・現ドラゲー、岡村隆史・現ドラゲー社長、多留嘉一・現TARU・フリー)らがぼこぼこにされていきましたが、天龍さんや冬木さんにぼこぼこにされたことで、彼らのプロレススキルは確実に上がりました。

冬木軍は情け容赦ない攻撃をしていましたから、当然声援は武輝道場に集まります。

そこで、私が鮮烈に記憶しているのは、山口県長門市農業者トレーニングセンターでの冬木軍対武輝道場戦でのこと。冬木さんは自ら北尾選手を相手に場外で大立ち回りを演じ、そのど迫力対決は会場をどよめかせました。

試合は武輝道場が勝利し、憎々しげに冬木さんが毒づいていたのですが、これに対してマイクを持った北尾は「俺たちが冬木をやっつけてやる!」と言い放つと、勝どきをあげて大会を締めてしまいました。これに会場は大歓声!あのブーイングと罵声しかあびてこなかった北尾選手がまさかのベビー化を果たしてしまったのです。

冬木弘道が足りない

デビュー戦や対UWFインターの時には想像もつかなかった北尾選手のベビーフェイス化を、いとも簡単に成し遂げた冬木さんの手腕に、私は舌を巻かざるを得ませんでした。考えてみたら、嫌われ者を嫌われ者のまま倒すというのは、簡単といえば簡単だったんですね。でも嫌われ者を自軍のリングに上げて、ベビーフェイスにするというのは並みの頭脳ではできないことです。

はからずも冬木さんなきあと、エンターテインメントに寄せたイベント「ハッスル!」が立ち上がった時、もとUインターの安生選手が「今のハッスルには冬木弘道が足りない」という名言をインタビューで残しています。冬木軍とも絡んだUインター勢のメンバーの一人として、安生選手の言葉は非常に重いものを感じますね。









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