*

[プロレス観戦記]全日本プロレス2017 ニューイヤーウォーズ観戦記

2018/05/24

全日本プロレス2017 ニューイヤーウォーズ観戦記(18・1.18福岡・小倉北体育館大会([観衆]388人)

実に二か月ぶりのプロレス観戦。極寒の小倉北はそれでもまだ床に素足とかいうのがないだけまし。大してきれいでもない山口の体育館は未だにスリッパ持参でないとあがれない所も多い。小倉北も以前は原則土足厳禁だったが、今はブルーシートの上でなら土足で上がれるようになった。真冬の観戦には本当にありがたい。

今回の目当てはなんといってもトゥルエノ・ゲレーロの参戦。しかも全日では珍しい3WAYマッチ。これは期待せずにおられようか。ということで期待値はすでにマックスになっていた。

 

第一試合:シングルマッチ
○青柳優馬(8分34秒・※逆エビ固め)岡田佑介×

秋山全日の痛い所はベテランと若手の二極化が進んでいるところで、いわゆる中堅層がほとんどいない。だからかつて6時半の男と呼ばれた百田光雄のような存在がいない。渕が元気だったころは若手の壁にもなっていたけど、もうさすがにそれは無理な年齢になってきた。もともと全日にも若手の登竜門になるルーテーズ杯があったりしたけど、現在では途絶えてしまっている。ただ今のように若手が多い光景というのは少なくとも馬場全日ではありえなかったことだったので、ルーテーズ杯の復活があっても面白いかもしれない。他団体の若手とも絡めて、新人育成していくことはやはり急務だと思うからだ。こういうのをやってこその老舗なんで、やはり冒険できるところはどんどんやってほしい。

さて黄色いタイツの岡田はデビュー5戦目という。先輩・青柳を前にしても臆さない度胸は立派だが、いかんせん自力では先輩とはまだまだ差がありすぎる。しかし技術の差を自分のありとあらゆるもので埋めて勝負しようとするところは、なんかただものではない感じがする。

そもそも全日の若手は、赤か黒のショートタイツ、もしくは現社長・秋山がかつてつけていた青タイツのイメージ(新日の場合、黒一色なのだが)があったけど、黄色を選ぶあたりになんかとてつもないセンスを感じずにはいられないのだ。やりかえしていくにしてもドロップキックで活路を開こうとするあたりは新人らしさも見せるが、やはり地力の差はいかんともしがたく、これも新人が通る登竜門的なフィニッシュである逆エビでギブアップ。

しかし、短い時間ながら見るべきものはあったと思う。ただ、やや独自色を出し始めている青柳はそろそろここらあたりから抜け出していってほしい。若手のセルフプロデュース力ということでいうと、なぜか昔からイマイチあか抜けないのも全日の悪しき伝統なんで、そこを書き換えられるくらいの成長が見たい。せっかく宮原が王者になって若手に追い風が吹いている以上、今が青柳にとってもチャンスだと思うのだ。

第二試合:タッグマッチ
○吉江豊・田中稔(11分02秒※ダイビングボディプレス)
ウルティモ・ドラゴン・不動力也×

超ヘビー級とジュニアの混合タッグ。いかにも地方にありがちなわかりやすいプロレス。序盤で稔が不動を挑発し、力比べに挑むあたりもベテランならではの味わい(同時に力負けするところも)。これに呼応してウルティモ校長も吉江を挑発。

しかし実をいうと皆アラフィフというのがネック。平均50代にしては非常によく動けていると思うのだが、ここに若手が一枚嚙めないところにもどかしさを感じる。実戦で身に付けられるものもあるので、勝敗云々は別にしてもこういうカードにこそ若手を混ぜてほしい。よくいえば鉄板なんだけど悪く言うと、予想外のものに乏しい気がするのだ。出来て当たり前のメンバーばかりだし。伝統芸能といってしまうといいすぎか?とにかく皆できることをできる範囲でやっている感じがして、意外性は全くなかった試合だった。

しかししばらくみないうちに不動は本当に真っ黒に日焼けしてしまっていた。今こそ黒毛和牛太にリングネームを戻してほしいくらいだ。ウルティモさんも稔も日焼けしているので、この中だと吉江の白さが妙に浮いて見えた。顔見世的にはここでなじみの選手がでてくるというのは重要で、これも全日本っぽいなといえば全日っぽかった。

第三試合:3wayマッチ
○SUSHIvsレイパロマvsトゥルエノ・ゲレーロ×
(7分23秒 ※TEKKAMAIKI)

正直いうと、ここにDDTの選手が入っていたらこんな惨憺たる結果にはならなかったのではないか?というのが結論。やはり地元の選手をあげる以上、プロサイドがある程度配慮するのは当然だろう。しかしSUSHIには3WAYをまとめる能力は正直なかったとしか言いようがない。パロマが好き勝手やるのはいつものことなんでこれはいいとしても、あまりに試合の進行がつたなすぎる。ゲレーロがプロの高い壁にぶつかっていくという図式もなかったし、クオリティ的に誰がプロなんだかわからないという微妙な空気にしたのは、やはり誰も3WAYに慣れてないというところが大きかっただろう。しかもSUSHIの実力が期待以下だったため、なんとも締まらない試合になってしまった。

3WAYというのは選手の技量が非常に問われる試合形式で、頭も使わないと大変厳しい。ゲレーロ相手にプロ二人が自分のいいカッコばかり見せようとするのはいかがなものか?やはり自分が目立つ以上に人を目立たせる技術がどこの団体にも不足しているけど、とりわけ全日はちょっと致命的なくらいだと思う。新日みたいにタイトルマッチまで3WAYでやるのは行き過ぎだと思うけど、ここまでできないんなら正直安易に3WAYは組まない方がいいし、どうしてもやりたいなら第二試合にでてたメンツの誰かをいれとけばまだ見られた試合になったかもしれない。そういう意味ではゲレーロには気の毒だったけど、いい勉強にはなったと思う。

まあ、そんなゲレーロに敢えて注文するなら次は憧れだけでなく、爪痕を残してきてほしい。それが客席からユニットを超えてゲレーロコールを送っていた、がむしゃらプロレスの仲間たちに対する恩返しにもなるからだ。

6人タッグマッチ
秋山準・石井慧介・×丸山敦(11分53秒
※ROD→片エビ固め)
長井満也○・ブラック・タイガーⅦ・南野タケシ

不思議なもんで秋山1人がいるだけで、混成軍ながら、全日正規軍にみえる。一方のダーク・ナイトメア(DNM)を率いる長井は完全に全日のヒールとして定着した感がある。ということでこれもわかりやすい地方大会の休憩前 メインという感じ。この中ではやはり丸山のやる気が抜きん出ていた。

もと虎のマスクマンとして、丸山の視界にブラックタイガーⅦがいたのはある意味必然かもしれない。しかしヒール軍はこうしたやる気をすかすのも実に上手い。南野が先導して効果的にベビー軍を分断していく。長井と南野の阿吽の呼吸には歴戦の勇士たる秋山も苛立ちを隠せない。場外戦を実に効果的に使っている点、そして各人が役割をしっかり全うしている点では、今全日を代表できるユニットはエボリューション(含む変態自衛隊)かDNMが両巨頭ということになるだろう。もはや正規軍が正規軍として機能しなくなっているという意味ではいまに秋山の力をもってしても、自力で勝利を呼び込むのは難しいということだろう。

個々人としては石井も丸山もメジャーに引けを取らない選手ではあるのだが、全日のヒールの看板を一手に守っているDNMとではやはりどう比較しても分が悪いとしかいいようがない。ここにもチーム力の差が浮き彫りになってしまっているのは大変残念なところである。とはいえこれ以上、他団体から選手を借りてきてもギャラの問題が立ちふさがってかなり厳しいと言わざるを得ない現実もある。色んな意味で落日の全日の現実を見た思いがした。ここから巻き返しを図ってほしいとは切に思うのだけど。

シングルマッチ
○大森隆男(11分14秒※アックスボンバー→片エビ固め)
中島洋平×

入場してくる前はBABYMETAL(Amore - 蒼星 -=中島のテーマ)対TMネットワーク(GET WILD=大森のテーマ)という音楽界の異次元対決が見られると思っていたんだが、実際に曲が流れると本当に異次元すぎて笑ってしまった。かたや2016年発売、かたや1987年発売!その差実に29年!これぞジェネレーションギャップ!しかし87年ってもう働いていたんだよなあ。それを思うとつくづく自分も歳をとったなあと痛感する。

でも「差」はそれだけではなかった!やはり馬場全日に入団した選手は基本体の厚みが違う。そして基本でかい。若き日に短期間ながら仮にもあのスタン・ハンセンのパートナーを務めていたのが大森でもある。この試合ではハンセンと並んでもそう見劣りしない大森のでかさに、小兵の中島が散々苦労するという場面も多々見られた。中島は全日に入団してからは基本に忠実なレスリングをしようとしているようにみえるけど、持ち前のスピードと小兵ならではの攪乱戦法でもっと大森をきりきり舞いさせる場面が見たかった。

確かに大森に密着して卍固めを狙うというのは対格差を考慮せずにすむことを思うと、効果的ともいえるだろう。だとしてもやはりもう少し大森を焦られる場面も欲しかったように思う。もともと培ってきた闘龍門時代のテクニックやめんそ~れ親父時代の経験値まで0にして中島洋平にこだわるのは、ことシングル戦ではマイナスなような気がする。そこはやはり今まで培ってきたものをすべてぶつけていかないと、中島洋平という、まだ誕生してそうまもないレスラーのレガシーだけでは、到底大森が重ねてきた歴史には遠く及ばないだろう。

実際腕殺しにしても、結局アックスボンバーを封じるところまでは至らなかったわけだし、そういう意味では中島の課題だけが浮き上がったような試合だった。

タッグマッチ
ゼウス・○ボディガー(12分45秒※バウンス→片エビ固め)
崔 領ニ・岩本煌史×

基本ボディビル上がりというのは見た目だけという評価をされやすい。実際ボディビル界ではそうそうたる実績をもつビッグガンズだが、ゼウスはまだしもボディガーは正直年齢的にも今からプロレスを覚えて上に上がるのは厳しんではないかと思っていた。ところがベルトを戴冠し、巡業もこなし練習や実戦を積み重ねてき結果、ビッグガンズはいつの間にか、力任せのでくの坊(失礼)から、できるチャンピオンにまで変貌を遂げていた。これはある意味驚異的なことではないかと思う。

もし大阪時代にビッグガンズが「アイアンマン」で入場していたらたぶん失笑ものだっただろう。仮にもレジェンドのロード・ウォリアーズが使っていたテーマ曲、それも歌詞を抜く形で編集した全日バージョンのアイアンマンを使用するということは、全盛期の暴走戦士への敬意を持ったうえでの挑戦ともいえる。しかし今や全日の看板の一翼を任されているビッグガンズなら、十分過去への挑戦権はあると思う。

昔はただせめるだけだったゼウスもしっかり崔の技や厳しい蹴りもしっかり受けていたし、不器用ながらボディガーもパートナーに追いつこうと必死だった。その泥にまみれてもプロレスに染まろうとしている姿勢には非常に好感が持てた。もっとも決して器用な選手に激変したわけではないので、そこは仕方ないものの、プロレスで名を残そうと必死な2人をみていると全日はやっぱ捨て置けないなあという気持ちにはさせられるのだ。

6人タッグマッチ
○宮原健斗・野村直矢・ジェイク・リー(21分06秒
※ジャーマンスープレックスホールド)
諏訪魔・青木篤志・佐藤光留×

エボリューションはひかるんがかき回し、青木が繋いで、諏訪魔が締められる公式が成り立つチーム。一方宮原率いるNEXTREAMは、野村とジェイクがかき回して、宮原がつないでしめないといけない。それはジェイクや野村、あるいはここに青柳が入ったとしてもに「つなぐ」スキルが弱すぎるためだ。従って宮原組が勝とうとしたら宮原にほかの2人の分まで負担がかかることになる。一人分の負担で済む諏訪魔とでは決定的に違いがある。それでも宮原が勝てたのは、ひとえに三冠王者としての責任感と、防衛V7を重ねた勢いと若さによるものだろう。しかし、宮原が仮に王座から転落し、いずれ若さもなくなっていくとしたら、どうだろう。それはそう遠くないはずである。そこで宮原以外に団体を引っ張っていける人材、そして宮原を支えられる人材がいてくれないと、結局ベテランばかりが挑戦してきて、宮原が若さで跳ね返す試合しか提供できないことになってしまう。NEXTREAMとエボリューションではチーム力に大きな差があったのだ。

プロレスは何もシングルマッチだけで測れるものではなく、普段のこうした6人タッグでもクオリティの高い試合を提供してお客さんに帰ってもらう必要がある。全日本の伝統は天龍が切り開き、四天王が確固たるものにしてきた、地方でも手を抜かないスタイルにある。そういう意味では、試合の9割をエボリューション(というか青木一人に)支配され、最後だけ勝ちを拾ったNEXTREAMを宮原がいうように「サイコー」というわけにはいかないのだ。NEXTREAMの課題は一にも二にもチームの底上げ、これしかない。宮原がいなかったらただの烏合の衆では、NEXTREAMも何もあったものではない。しかし若き宮原にチームの底上げまで期待するのは酷かもしれない。やはり青木に対抗できる参謀がNEXTREAMにもいないと、いびつで時間だけ長い6人タッグが今後も続いていく可能性がある。ここは他団体でもいいので、誰か共闘者を探すべきだろう。

正直、今の全日は伝統だけを重んじて、落ちるところまで落ちた感が否めない。東スポ大賞でも、オカダや内藤は強烈な光を放っているけど、宮原にはそこまでの輝きを感じなかった。メジャー新日は確かにお金もあってテレビもついて、親会社もしっかりしていて、いいところしかないようにみえるだろう。また地方での新日はお世辞にもあまり面白いとは言えない。でも1.4で見せたケニー対オカダの40分越えの死闘を提供できる自力もある。お金やバックは二の次で、やはりプロレスはすごい試合をしてなんぼ。2017年はケニー対オカダを超えるために新日だけでなく、各団体にさらなる奮闘が必要不可欠になってくる。そう考えると、宮原には更なる重圧がかかってくるだろう。そこをはねのけてこそ初めて「全日本プロレス、サイコー!」と心から言えるのではないだろうか?

「昔話は嫌いだ」と宮原は言うけど、その伝統に乗っかって商売しているのが全日本プロレスという団体のカラーである以上、歴史との戦いは避けられない。普段口はしないけど、オカダも内藤も棚橋も新日の歴史とは闘ってきて現在があるのだ。キライだから遠ざけるのではなく、その歴史の重みに真正面から向き合って勝つくらいの三冠王者になってほしい。それができてはじめて、宮原健斗は真の全日の看板になりえるだろう。

それともう全日はそろそろ小倉北から撤退した方がいいかもしれない。小倉北は天井が高い分、熱気がこもりにくい。会場の声援も分散して聞こえてしまう。そうなってくるとこっちも応援しにくいのだ。伝統にのっとっていくのもいいけど、身の丈に合った大会を開くことも考えてもいいんじゃないだろうか?そこへいくと新日本は北九州自体に来ていないんだし、ノアも来ないだろうからライバルと目する団体を出し抜く可能性はあるのだ。










au公式/ビデオパス

-がむしゃらプロレス観戦記, プロレスよありがとう!クレイジーでモンスターな好事家がマニアに捧げるメモリアルブログ, プロレス観戦記, 全日本プロレス観戦記

『FREEDOMS vs がむしゃらプロレス 対抗戦』