[プロレス観戦記] 大日本プロレス「一騎当千~strong climb~」博多大会(2016.3.20博多スターレーン)
2018/08/30
大日本プロレス「一騎当千~strong climb~」博多大会観戦記(2016.3.20博多スターレーン)
約4年ぶりになる大日本プロレスのスターレーン大会。正直気になる団体でありながら、なかなか地方にこないので、わざわざ博多まで行かなくてもいいかな?と思い、今まで行こうともしなかった。
大日の場合、必ず他団体と共催という形でくるため、見る側からすると1日スケジュールが開かない限り、1日複数の大会を観るのは難しい。体力的にも昔みたいにいかない以上、いずれかを諦めるならば、大日を切るしかない。
なぜならば、大日はドラゲーの次に博多に来る率が高い。よって「一回見逃しても次来るならいいか」となり、それがズルズルと四年も時間を空けてしまう形になるのだ。
大日にしろドラゲーにしろ選手はかなりキツイ試合をしているはずだが、こうまで大会回数が多いと、よほどのひいき筋でない限り、観戦する団体の取捨選択は必要になってくるのは致し方ない。
東京だと毎日どこかで試合があり、競合しても各団体にそこそこお客さんは入るかもしれないが、それは東京の理屈であり、地方には通用しないのだ。
▼オープニングマッチ 20分1本勝負
谷口裕一 vs 植木嵩行
○植木嵩行
(2分49秒)
X谷口裕一
※反則
☆特別レフェリー:グレート小鹿
---再試合---
○谷口裕一
(4分05秒)
X植木嵩行
※ラ・マヒストラル
思えばはじめて後楽園でプロレスをみた最初の試合がまだ練習生だった谷口と山川(引退)のエキシビションだった。あれから何十年も経過して生え抜き最年長になった谷口に若手の有望株というか、既にスターである植木が闘うシングルマッチ。
しかし、この試合実は特別サプライズレフェリーとしてグレート小鹿が裁くはずが、本人が試合前にロビーにでてしまい、長々スタッフと談笑しているのを、並んでるファンに見られてしまったのだ。
試合前に珍しく登坂社長がリングに上がり、お客さんに事情を説明。あくまでもサプライズという体にするため、小鹿レフェリーが入場したら「オー!と驚いて下さい」という異例のお願いがあり、その通りに軍艦マーチに乗って小鹿レフェリーが登場すると場内大歓声。
ところが相変わらず自由な小鹿レフェリーは手を離さない植木の反則カウントをきっちり五つ数えてしまい、植木が反則負けに!おさまりがつかないというよりあっという間に試合が終わり、登坂さん含めレフェリーになぜか抗議して?再試合に。
まあ、再試合も似たような感じだけど、最後は谷口が勝ち、ゆる〜い感じの第一試合は終了。
▼第2試合 アイスリボン提供 シングルマッチ 30分1本勝負
宮城もち vs 優華
○優華
(8分11秒)
X宮城もち
※スクールガール
自団体では15分〜20分で闘うことが多い女子プロレスでは他団体に出た際、30分なり60分なりの制限時間があるにも関わらず序盤からバタバタした試合をする選手が多い。
短時間の試合感覚を身体が覚えているのもあるんだろうが、ある意味間が空くのを恐れているようにも感じられる。しかし、もちに動じる素振りは見られない。ぶっちゃーずとは違うコスチュームとキャラクターで、時にはコミカルに、時には激しくぶつかり合う。
役割をよく理解しているし、優華を上手く引き立てて、試合を組み立てている姿はまるでハム子をみているみたい。やはりあれだけできる選手のそばにいて、自分のスキルアップをできるという意味ではもちは恵まれていると思う。
そのもちに優華が食らいついていたのも素晴らしい。2人ともだが、30分一本勝負という試合時間に合わせ、間が空くのをいとわない。序盤はじっくり、中盤はレフェリーを巻き込んでコミカルに、終盤は激しく試合をしていく様はとても17歳とは思えない。アイスが大日に自信を持って提供できるカードなんだなあ、と思った。
▼第3試合 タッグマッチ 30分1本勝負
鈴木秀樹 宇藤純久 vs 橋本大地 菊田一美
宇藤純久
○鈴木秀樹
(10分32秒)
X菊田一美
橋本大地
※ダブルアームスープレックス→片エビ固め
この中で光るのはやはり鈴木の存在感。ビル・ロビンソン最後の弟子というのはやはり伊達ではない。若い菊田や大地にはないテクニックはさすがの一言。正直IGFにいても宝の持ち腐れ。
鈴木を通してみると、菊田はやはり経験不足が目立つし、大地はキックに頼りすぎているのがわかる。グラウンドになると正直敵わないなと思う。菊田はまだしも大地はあれでいいのかなあ。ちょっとグラウンドでは鈴木についていけてなかったし、蹴りだけだとこういう相手がくるとなかなか難しいんではないだろうか?大日もそう甘くはないところなんで若手の中から一歩抜きんでるには橋本の名前だけではやがて行き詰まるだろう。
試合を決めたダブルアームスープレックスはこれぞ正調ビル・ロビンソン式!投げられた相手の身体が流れないため、カバーにいくタイミングにも無駄がない。だからスリーカウントがとれる。ダブルアームの威力はもとよりロックもカバーも完璧。久しぶりにいいものをみせてもらった。
▼第4試合 有刺鉄線ボードタッグデスマッチ 30分1本勝負
アブドーラ・小林 藤田ミノル vs 木髙イサミ 塚本拓海
塚本拓海
○木高イサミ
(13分33秒)
X藤田ミノル
アブドーラ・小林
※絶槍→片エビ固め
アブ小と藤田は大日生え抜きタッグというくくりで、藤田がアブ小のコスで、アブ小が藤田のコスで入場。絆をアピールするのかと思いきや、BASARA勢に体良く分断され、連携もバラバラ。
藤田は相変わらず口撃は達者だが、現KO-D王者のイサミはなかなかひっかからない。逆に塚本との連携で藤田、アブ小をローンバトルにもっていく。ヤンキー2丁拳銃で培ったタッグワークの妙はパートナーが宮本でなくても意に介さない。
こうなるといかに曲者の藤田とアブ小でもどうにもならない。ただし、やはり藤田にはデスマッチが似合う。デビューした当時からは信じがたい光景ではあるが、藤田には枷はいらないと思う。もっと自由にもっとのびのびしたプロレスを続けていってほしいと思う。そういう意味では今の大日とかはうってつけのリングなんだろうなあ。
学業の目処がつくまではコンディション作りも大変だとは思うが、ケリがついたら今以上に思い切りプロレスを楽しんでほしい。
▼第5試合 デスマッチヘビー級王座前哨戦 蛍光灯6人タッグデスマッチ 30分1本勝負
伊東竜二 “黒天使”沼澤邪鬼 竹田誠志 vs 稲松三郎 星野勘九郎 稲葉雅人
竹田誠志
“黒天使"沼澤邪鬼
○伊東竜二
(14分00秒)
X稲葉雅人
星野勘九郎
稲松三郎
※ドラゴンスプラッシュ→体固め
伊東対稲松の前哨戦のはずがフタを開ければ、平成極道の独壇場に!特に星野の受けの物凄さは見慣れた形式のデスマッチであるにも関わらず、何度も感嘆せずにはいられなかった。
こういう相手を前にすると竹田や邪鬼のクレージーぶりにも拍車がかかる。気がつけばタイトル前哨戦というより、邪鬼&竹田と平成極道の血で血を洗う攻防が試合の大半になっていた。
とはいえ、伊東も蛍光灯以外にイスを繰り出して稲松を叩き潰しにきていたし、稲葉もこの中に埋もれまいと必死だった。だから前哨戦とはいえ、白熱した試合になったのだと思う。
しかし、デビュー一年の神谷と他団体の真田にメインを任せて、名のある選手を全てセミ以下に配置できるマッチメイクは冒険にすぎる。こういうことがサラッとできてしまうのが今の大日の強みなのだ。
▼セミファイナル 6人タッグマッチ 30分1本勝負
岡林裕二 田中純二 アミーゴ鈴木 vs 関本大介 阿蘇山 佐久田俊行
佐久田俊行
阿蘇山
○関本大介
(12分43秒)
Xアミーゴ鈴木
田中純二
岡林裕二
※垂直落下式ブレーンバスター→片エビ固め
比較的大柄な中にあって、日本人最小レスラー佐久田の健闘が光る試合だった。若い頃の星野勘太郎さんのような突貫小僧ぶりはみていて気持ちがいい。
団体内では役割を求められる阿蘇山や純二が久々に枷を外した強さを発揮!岡林との真っ向勝負を楽しむようにしていた阿蘇山にしても、関本のサソリを下から切り返した純二にしても、自団体で試合する時よりイキイキしてみえた。やはりこの2人の強さに今の九州プロレスは狭すぎる気がする。
久々にみたアミーゴもつられてなんか楽しそうに試合していたし、当の関本、岡林も楽しそうだった。こういう試合が普通に提供できるのは、今の大日の強みといえるだろう。
▼メインイベント 一騎当千~strong climb~Aブロック公式戦 30分1本勝負
神谷英慶 vs 真田聖也
[2勝1敗=4点]
○真田聖也
(13分16秒)
X神谷英慶
[1勝2敗=2点]
※ラウンディングボディプレス→片エビ固め
昨年デビューしたばかりの神谷は一年経たずに岡林とのシングル戦を体験した超逸材。強いて言うなら若い頃の関本を彷彿とさせるタイプ。
しかし、神谷の特徴的な点は今時の選手が好む派手めの技を使わないことにある。この日使っていたストレッチプラムにしても、WARスペシャルにしても、相手に自分の体重をのせる感じで負荷をかけているため、スタミナをうばうという意味では非常に理にかなう攻め方をする。
悪くいえば、若さにまかせた遮二無二さや、勢い任せなところがないので、プロフィールを見なければ、とてもデビュー一年の選手とは思えない。
こういうバケモン予備軍がいるから、大日は侮れない。もし真田にメジャー出身という変なプライドがあるならば、下手したら神谷の軍門に下っていただろう。
しかし、真田には神谷を格下扱いする姿勢がていぞ見られなかった。W~1からTNAを経た経験は精神的に真田を大きくしていたのではないだろうか。
それと他団体ながらこうしたリーグ戦で名をあげてやろうという野心めいたものすら感じた。これは全日時代には感じられなかった真田の成長した部分だったと思う。
試合は神谷に押されながらも、決めるところで畳み掛けられる真田の技量が神谷を振り切り勝ちを収めたが、試合後のマイクの通り、真田はこのリーグ戦にかけている気持ちはヒシヒシと伝わってきた。また負けたけど神谷は素晴らしい試合をしてくれた。
全試合終了後だいたいの選手は売店に立つ大日にあって、メインイベンターながら若手でもある神谷は他の若手陣と共にリング撤収に汗を流していた。本当はサインもらいたいとこだけど、邪魔しても悪いのでそのまま帰ることに。
久々に二大会通し観戦したけど、アイスも大日もどちらも満足度の高い大会だった。来年もぜひこの組み合わせをみてみたい。