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がむしゃらプロレスGWOSpecial Present!!『BLACK VALENTINE's』 ~激闘バレンタイン決戦~( 2016年2月14日(日) 会場/門司赤煉瓦プレイス)観戦記

がむしゃらプロレス"GWO"Special Present!!『BLACK VALENTINE's』 ~激闘バレンタイン決戦~( 2016年2月14日(日) 会場/門司赤煉瓦プレイス)観戦記

昨年11月の北九州芸術劇場大会の結果を受けて、チーム凱、gWoそれぞれのユニットが自主興行をしてどっちが面白いかで決着を付けようという流れで決まった本大会。奇しくも2月14日のバレンタインというすごい日を引き当てたのも運命的ともいえよう。場所が門司赤レンガにうつったこともあり、キャパの狭さが問題視されてきた点が唯一の不安材料になっていたが、ふたを開けると階段も隙間なく埋まる超満員札止め。プロ団体でも集客で苦戦する昨今、がむしゃらの勢いはとどまるところを知らない。果たしてこの勢いのまま突っ走っていけるのかどうか?今年初の大会は寒波の中スタートした

▼がむプロ名物おまけのタッグマッチ(疲れん程度1本勝負)

①ブラック☆スティック & ×パンチくん vs MIKIHISA & ○マスクドGWO九号

(7分35秒)

昨年の芸術劇場大会で、まさかの?gWo転向を果たしたダイナマイト九州…にとてもよく似たgWo九号。そもそも二号から八号はどこにいるんだ?という話になるんだが、そのマスクドgWo九号をあざ笑うかのように、パンチくん改め、パン子ちゃんがやりたい放題!

女装くらいならある程度やりかねないという予想はできていたが、まさか金髪が地毛とは思いもしなかった!だから、MIKIHISAがマスクに手をかけるとマスクごと金髪まで取れてしまった!

ここまで自由なパン子ちゃんに対し、九号も負けてはいない。黒棒の棒に対抗して極太黒棒を持ちだし、チャンバラするわ、自前の棒を敵陣にとられるわ、相変わらず自由すぎる。

久しぶりに疲れん程度に入ったMIKIHISAが現在のキャラクターを崩さず闘っていたのも面白かった。デビューが疲れん程度だったことを思うとこの好き勝手するメンバーに埋没しなかったのは成長の証。

しかし、MIKIHISAも、もう今年は新人枠では見られなくなる。確かにgWoではまだ新人ではあるのだが、今年はいよいよ一人前の戦力としての成果が問われる年になるだろうと思うからだ。

▼シングルマッチ(20分1本勝負)

②×紅 vs ○マスクドGWO1号[鉄生]

(6分27秒)

紅に関して言うと、キャラクターが先行しすぎて、入場だけで完結しているのが現状だと思う。だから試合を見ていても気持ちが何も伝わらない。更に言うと攻守ともに迫力がない。

攻めても効かないと手数がとまるし、守りはただ寝そべってされるがままになっている。特にうつ伏せでは表情がわからないため、見ている側も感情移入しづらい。これでは紅というキャラクターがかわいそうである。

現段階の技術で出来ることはたくさんある。例えば責めるなら1発で効かないなら10発、10発で効かないなら100発打つ気持ちで技を出す。受けるならうつ伏せではなく、片膝ついて拳を握りしめ、歯をくいしばる、などだ。

受け身の技術や繰り出す技の種類が心もとないなら、今の紅で出来る最大限を表現するべきである。対七海健大戦にしろ、今回の鉄生戦にしろ、対ヘビー級が敗戦の理由という言い訳は成り立たない。なぜなら後輩のゲレーロしかり、先輩のYASU、キッドしかり、皆対ヘビーの試合を成立させているからだ。

残念ながら皿倉山で健大に言われたのと同じ言葉(「恰好ばかりでだらしない。コスチュームを変えて出直して来い!」)を鉄生から浴びせられた結果は重く受け止めてほしい。仏の顔も三度まで。今のままの紅で終わるか?それとも林祥弘のように大化けするか?次回の試合がまさに正念場である。

▼タッグマッチ(30分1本勝負)

③ジェロニモ & ○七海 健大 vs ×L.O.C.キッド & X[野本一輝]

(10分19秒)

写真を整理していて気付いたのだが、チーム凱もキッドも意外なくらい出番がたくさんあったのだ。では何で印象に残らなかったか?答えは簡単。野本一輝がいたからである。gWoのXとしてはこれ以上ないインパクトである。かつては一度マスクドPTの誘いを受け、LOC入りした過去もあるし、その渦中で同じく勧誘されヒール化して現在に至っているのが、ほかならぬキッドなんで、まさか裏切られるとは露ほども思っていなかっただろう。

人が好いという意味では四人が四人とも好感のもてる社会人だが、野本を除く3人はしばしばリングにも人の好さを持ち込んでしまう。だから時々他の選手に出し抜かれてしまったり、星を取りこぼしたりしている。しかし、一輝は自分が一番美味しくなるためには味方をも蹴落としかねないレスラーである。それを忘れていたのは、やはりでかかったと思う。

そういう意味ではがむしゃらプロレス全体が「いいひと」化し過ぎていて、見ている我々もそれに慣れすぎていたのかもしれない。いきなり一輝という劇薬が混ざったことで、試合のバランスもカオスな状態になったのはもちろんだが、これだけでは終わらなかった。

一輝はさらにgWoを土壇場で裏切り、一人でさっさと退場してしまう。このあたりは、残った観客も選手も唖然呆然するしかなかった。こういう手の込んだ裏切り劇を事前に仕込めているなら、チーム凱はとっくの昔に天下がとれているはず。ということはこの裏切り劇は野本一輝の自作自演であり、チーム凱の助っ人にかこつけてちゃっかりおいしいところをもっていく計算だったとみることもできるかもしれない。割食った3人には気の毒だったが、もともと一輝がそういうキャラだったことを失念していたという意味では、みている私も含め、見事に彼には騙されたといっていいかもしれない。

▼6人タッグマッチ(30分1本勝負)

④×タシロショウスケ & 陽樹 & 久保希望 vs グレートカグラ(JOKER) & ○鉄生 & YASU

(13分52秒)

いつの間にかチーム凱入りしていたタシロだが、彼もまた正念場を迎えている。もうとっくに新人の枠は外れているし、あのガタイでおまけ軍にしか居場所がないのは大変もったいない。かつてはユニットの大半から勧誘を受けた驚異の新人も今やゲレーロにそのお株を奪われてしまった以上、やや遅いタイミングではあるけど、ここでチャレンジマッチに挑むのは意義がある。そのうえ久保と陽樹という心強い味方がいれば、難敵gWoにもなんとか向かっていけるのではないか?とは思っていた。

しかし現実は厳しいもので、久保には、難敵だんだんプロレスの刺客・カグラが、陽樹の前に現ジュニアチャンピオンのYASUが敢然と立ちはだかる。イベント試合ではぶつかることが多いYASUと陽樹だが、対ヘビー級をテーマに掲げるYASUにとって陽樹は格好の標的。今の時点でへたすると四月までヘビーの防衛戦もなく、やや目標を見失っている感があった陽樹にしてみれば、YASUの一刺しは王者の眠りを覚ます一撃であったことは間違いない。昨年のひなた苑から続くYASUとの攻防は一回シングルで陽樹とぶつかってみると新たな展開が見られる可能性もあるので、面白いかもしれない。

この試合でそうした点にスポットが当たること自体にも意味がある。以前なら鉄生と陽樹が他を無視してまでお互いをつぶしあっていたのだけれど、今はチームリーダーとしてどっちがよりチームをまとめられるかという競争に移行した感がある。だから、2人が私怨におぼれることなく、裏側で意地の張り合いをみせたこともこの試合を面白くした要因である。

野本一輝が凱の助っ人ならば、圧倒的戦力を誇るgWoの助っ人がカグラなわけで、最終的には彼のアシストが粘るタシロを孤立させた要因のひとつであったことは間違いない。まあ、でも思ったよりタシロはいい動きをしていたし、孤軍奮闘もして見せた。次回凱興行でどの立ち位置に来るかはわからないが、その時に今回の経験で得たものを披露できれば、今回の経験も無駄にはならないだろうと思う。

▼スペシャルタッグマッチ(30分1本勝負)

⑤○ジャンボ原 & 阿蘇山 vs ×豪右衛門 & 葛西純

(12分03秒)

ここのところどうも強烈なインパクトを残せていない豪右衛門と本格復帰後、着実に足元を固めてきたジャンボ。それぞれが対プロという先例を受けるタイミングにまで自身を高めてきたことは称賛に値する。しかしジャンボはともかく、豪右衛門はなんとなくナーバスになっているように見えた。あの強心臓でここまで成り上がってきた豪右衛門も相手が阿蘇山だと勝手が違うのだろうか。途中の肉弾戦までは迫力があったのだが、なんかいつもと違って見えた。

一方のジャンボは葛西にも臆したところがなく、阿蘇山の後ろ立てもあってか元気いっぱい。一番いいころのジャンボになりつつあるように感じた。しかしそれに対して葛西も全く遠慮はしない。阿蘇山であろうと、ジャンボであろうと遠慮会釈なくつぶしにかかるあたりはさすがとしか言いようがない。いついかなる時もコンディションが悪かった時がないのは本当に素晴らしい。デスマッチであろうとそうでなかろうと、葛西純は葛西純なのだ。

試合はやはりというか豪快さが影を潜めた豪右衛門がジャンボに屈する形で終わってしまったが、やはりここから一皮むけるためにはなんか起爆剤がほしいところ。対プロでもベルト挑戦でもいいので、自分から望む形でアクションを起こしてほしいかな。ここで終わるのはやはりちょっともったいない。

▼スペシャルシングルマッチ(60分1本勝負)

⑥×林祥弘 vs ○佐々木 貴

(18分50秒)

昨年、林のほうから殿に突っかかっていって、それがきっかけで実現したこのシングルマッチ。もちろん相手が社会人だからとかいうことで殿が手を抜くはずがないし、林も自ら志願したことで、気合の入り方も半端なかった。それは殿がコスチュームを脱ぐ前に林が奇襲したあたりで早くも証明された。百倍返しを恐れず、先手必勝を貫いた林は本気で勝ちに行っていた。その心意気は本当に素晴らしかった。

しかし、やはり殿も百戦錬磨のつわもの。先手を取られた場外戦で逆襲に成功すると、受けるよりつぶすスタイルでこわい佐々木貴を披露。こっちもやはり超本気モードでかかってきていた。こうでないと面白くない。一見すると防戦一方に見えた林だったが、己のすべてをぶつけるような渾身のチョップには今まで見たことないくらいの迫力を感じた。

林のチョップの威力に関していうと、デビュー当初は手打ちになっていて全然迫力もなかったし、それでダメージすら与えてなかった。同期の野本や健大がどんどん先に行く中、カメの歩みで進化する林には何度となくもどかしさも感じてきた。スミスの壁に二度も屈し、途中諸事情で欠場せざるを得なくなった時もあり、もがき苦しんだ中でコツコツと己を磨き続けた。その過程がこの試合のチョップにはすべて込められていた。今や林はチョップの使い手としてはがむしゃら随一の存在になっている。

この日の林のように技に気持ちが乗せられて、それが見ているものに伝わるというのはとても大切なことである。泥にまみれることをいとわない時点で林祥弘は立派なプロレスラーだった。それがあったからこそ、殿も最大限の敬意をもって叩き潰しに出たのである。プロレスというのは魂と魂のぶつかり合いであり、決して入場シーンで終わったり、自分だけ格好がつけられればそれでいいというものでもない。林や殿が言葉ではなく体や技でそれを語って見せたのは大きな意味があったと思う。

そしてもし対戦している2人が相手のことしか見てないのであれば、やはりこういう試合にはならなかっただろう。観客の目というものを常に意識したうえで全力の死闘を演じたという部分がこの試合を屈指の名勝負にした要因のひとつであろう。これこそ結果はどうでもよかった。試合の中で何を表現できているかが重要だったわけで、林はその課題を見事クリアしてみせた。やはりだてに芸術劇場のメインを二回連続はってきたわけでない。下手したら野本一輝のインパクトに埋没したかもしれない彼のレスラー人生で、己の力だけで輝いて見せたこと。ここに最大の意義があったのだ。そしてそれを見事に引き出した殿のプロとしての力量の確かさと、懐の深さには脱帽するしかなかった。素晴らしい試合だった。

▼GWA認定インターコンチネンタル選手権 初代王者決定戦(60分1本勝負)

⑦×トゥルエノ・ゲレーロ vs ○マスクド・PT

(16分03秒)

ゲレーロが驚異の新人と呼ばれるのは、デビュー一年未満でジュニア、インタコンチ、タッグ(3月8日に挑戦)とがむしゃらの4大タイトルのうち3つに挑戦していることである。例えばジュニア初挑戦まで8年余りを擁しているジェロニモとかと比べるといかに彼の才能が図抜けているかわかるというものである。そのメキシコ仕込みのジャベはほかの選手にはないゲレーロにしかない持ち味でもある。

そのうえ、味方陣営にはGAM1でPTに勝利したジャンボ原、絶対王者時代にPTに挑んで敗れた尾原もいて、経験者である先輩方のアドバイスまでも受けられるという恵まれた環境にある。だが、いくらブランクがあるとはいってもPTの総合力まで衰えるわけでない。なぜなら、PTの最大の武器は「まわりが異常に見えている」ことだからだ。

この視野の広さをもつ人間は実を言うと、がむしゃらではスミスくらいしかいなのが実情。鉄生も陽樹も急迫しているがまだまだPTの領域には達していない。つまりPTを試合巧者足らしめているのは、ひとえにこの「見えている」部分によるところが大きい。一見すると時折PTはキレてみせたりすることもあるが、あれはスミスの死んだふりと同じくらいあてにならない。なぜならそれもPTの計算のうちだからであるからだ。

とはいってもいきなりPTレベルの視野をもつのは不可能に近い。であるならばジャンボ同様一点集中で攻め切る非情さとしつこさがないと、ちょっとPTを超えるのは難しいだろう。数年前ならスミスがやっていたように「いい人」口撃で精神的揺さぶりもかけられたけど、gWoになっていい人になることも躊躇しなくなったPTにはもはや通用しない。

この試合に限らず、ゲレーロの試合運びで唯一不満があったのはジャべでなく空中戦で勝負に出るシーンが多々目立つことだった。せっかくジャべというメキシコ仕込みの唯一無二の個性があるのに、なぜそれを捨ててまで空中戦に固執するのか?ゲレーロだけではないが日本人ルチャドールにはとかく飛べばいいというおかしな信念が多々見受けられるので、この風潮は早くどうにかしてほしいなあと思っている。

実際飛べばいいということで言うならメキシコ人でなくても新日の第一試合で繰り広げられるアクロバティックな3WAYなり4WAYのIWGPジュニアタッグをみてみたらいい。彼らの飛ぶ技術はおそらく世界一といっても過言でない。そのメンツの中にルチャドールはほぼいないのだ。つまり空中戦はもはやルチャの専売特許ではなくなっているということでもある。その命を削った彼らの試合がなぜ「すごい」だけで片付けられ、いつまでたってもビッグマッチの第一試合にしかなっていないのかという理由をよく考えていくと、空中戦に頼るプロレスの限界がいろいろみえてくるはずだ。

この試合の話に戻ると、序盤で大いに威力を発揮したゲレーロのジャべを耐えきったPTが次第にペースを取り戻していき、終盤では余裕すら感じられた点で勝負あった。正直いうと終盤でMIKIHISAがゲレーロの足を引っ張る暴挙に出てはいたが、あれは蛇足に過ぎなかったとしかいいようがない。多分PTが終始正攻法で行っても、ゲレーロがジャべ攻撃を諦めた時点である程度結果は見えていたと思う。かくして勝利の女神はまたしてもゲレーロには微笑まなかった。

まあ何度も言うけどデビュー一年未満で、これだけのチャンスを与えられたというのは、彼の実力を誰しもが認めているからこそでもある。それだけにYASUにもTOSSHIにもPTにも言われた「相手しか見えてないのでは勝てない」という課題を早急にクリアしていく必要がゲレーロにはあると思う。チャンスを与えられた責務として、たぐいまれな才能をもっているからこそ、結果を出さないといけないことはたぶん本人が一番わかっているはずである。

試合後、チーム凱とgWoが乱闘になったが、ここでも目立っていたのは野本一輝。やはりおいしいところを逃さない嗅覚はさすがとしかいいようがない。それでも最後に締めたのはやはりgWo。昨年のgWo興行では七海健大の涙に全部興行の余韻をもっていかれてしまったが、今年は一矢報いた意味で成功といってよかったと思う。さてこれを受けて4月のチーム凱がどんな大会をみせてくれるか今から楽しみである。

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