*

[プロレス観戦記復刻版] 97.7.22「無我」第九弾 無我トーナメント3 博多大会

2018/06/13

97.7.22「無我」第九弾 無我トーナメント3 博多大会

観戦記を書く前に「無我」について説明しないと、今のファンはわからないだろう。ということで、以下wikipediaより引用。

無我はクラシカルなレスリング色の強いプロレス興行。コンセプトは「古き良き時代のプロレスの復活」、「1800年代の伝統あるプロレスを蘇らせる」というもの。1995年10月29日、クラシカルなプロレスへの原点回帰を提唱した新日本プロレスの藤波辰爾が設立。ATCホールで旗揚げ戦を開催。藤波が新日本の社長についてからは「無我継承者」と名乗った西村修も運営に参加している。

で、私の補足として、無我には当初は主にヨーロッパのクラシカルなレスリングを紹介するという色合いもあった。今大会には、かつて「人間風車」ビル・ロビンソンを輩出した、蛇の穴ことビリー・ライレー・ジムのメンバーが大挙来日していた。なお無我後期にはかつて藤波さんと名勝負を繰り広げたライバルも登場しているので、現在ドラディションがやっているような形態に近いと思ってもらいたい。なお無我でデビューした倉島信行、正田和彦は無我三銃士とも呼ばれた。

ちなみに無我では大会終了後に全選手による記念撮影が恒例となっていたが、たぶん今に続くリングに上がっての試合後の記念撮影をやる「はしり」になったと私は思っている。

今大会のトーナメントはランカシャーレスリングトーナメントと称され、ビリーライレージムの実力者たちが大挙来日していた。8選手による勝ち抜き形式で、優勝するためには三回勝たないといけないという過酷なものだった。ということで本題。

3年ぶりの博多にして、3年ぶりのスターレーン。狭いこの会場に詰め込むだけ人を詰め込んで、人ごみに酔うこともしばしばあり、それゆえに足が遠のいていた。その上、ただ馬鹿騒ぎするだけの観客に嫌気もさしていた。わたしにはそれが「西の聖地」の奢りにみえた。

実は前回の無我博多大会はそうした経緯からいくのをやめて、東京のスーパーJ CUPを観に行く選択をしてしまった。実際、日本初上陸のレイ・ミステリオjr.の試合は特に素晴らしく、無理してでも行った甲斐があった。

しかしやはり心のどこかに「無我がみたい」気持ちがあって、今回は満を持しての観戦となった。だが、この日は職場のクーラーが故障し、酷暑の中仕事してからその足でスターレーンに向かったため、観戦前から既にヘロヘロ。

オープニングは無我の成り立ちを見せる映像。続いて全選手入場式。この日参加していたレッスル夢ファクトリーの福田には、より大きな声援が飛んでいた。

さて、挨拶後に、無我では恒例の公開練習。基本的な動きから受け身、あるいはちょっと変わった動きまで。特に目を引いたのは受け身やプッシュアップよりも、コンディション造りに重点をおいたトレーニング。御年51歳のフィンリー・ブテネンもこの輪の中に入って普通に練習していたが、解説をする藤波さんがやたら「51歳」を強調していたのがおかしかった。もっとも51歳になってもコンディションさえ整えば、リングには上がれるという事だと思うけど。

この練習で巻き投げをしている風景を、リング下の関係者と思われる子どもたちがマネをしていた。どうも藤波さんのお子さんたちのようだった。暗くて顔はよくわからなかったけど。

トーナメント一回戦:シェーン・リグビー(ビリー・ライレー・ジム)対 ジョン・パトリック(ビリー・ライレー・ジム)

リグビーはブリティッシュ選手権銀メダル、ヨーロッパ選手権銅メダルという実績を持つ、欧州の実力者。試合が始まると目まぐるしく動く両雄。UWFと明確に違う点は、グラウンドでのムーブが関節の取り合いではなく、フォールを目的にして動いていること。まさに二人とも「レスリング」をしていたわけである。「なるほど、レスリングの原点回帰とはこういうことか」と思わされた試合。

考えてみたらアマレスにはキックも関節技もないんだから当たり前っちゃ当たり前。でもだからこそ新鮮で面白かった。ただ、終始一貫してフォールだけを狙いに行くパトリックに対して、リグビーは要所要所で関節技を決めに行く。このあたりリグビーがプロとさして、一枚上手だなというのはみていてわかった。要するにアマレスだけではない「武器」を持っている分、「プロレスラー」としてはリグビーが有利なのだ。

しかもリグビーは投げ技を温存しており、終盤で決めたフィッシャーマンズスープレックスは鮮やかなもの。そこまで計算づくで相手にダメージを与えてからの効果的な一発は、序盤からきちんとした積み重ねがあってこそのレスリングなんだという事を見ている私に教えてくれたような、そんな試合だった。

トーナメント一回戦:アレクサンダー大塚(格闘探偵団バトラーツ) 対 竹村豪氏

無我生え抜きの竹村と、藤原組長の遺伝子をもつ格闘探偵団バトラーツに所属しているアレクとの一戦。この日デビュー戦となる竹村にとっては、対戦相手が強大過ぎたというのはあるだろう。ただし積極的にフォールを取りに行こうという姿勢は素晴らしい。ただ、経験不足のためかスタミナの配分に難があった。なので、試合後半にはバテバテに。竹村に限らず、実戦経験が足らない分、無我戦士たちはスタミナ配分に課題があったようにみえた。

ついに大塚の余裕を崩すところまではいかなかったというのが正直なところ。でも竹村を見下すわけではなく、ここで何かを学び取って帰ろうという貪欲な姿勢がみえたのは好感が持てた。

トーナメント一回戦:フィンリー・ブテネン(ビリー・ライレー・ジム)
対 ダレン・マロニス(ビリー・ライレー・ジム)

51歳のブテネンは実ににこやかに入場。手を振って観客の声援にこたえる余裕っぷり。一方のマロニスはブリティッシュ選手権銀メダリスト。こちらも当然実力者なのだが、ブテネンの間の外し方や、間の取り方はさすが年の功というべきか。そういえばブテネンはヨーロッパ勢で唯一プロレス用のレスリングシューズを履いていたので、ヨーロッパのどこかの団体に参戦経験があるのだろう。

しかしマロニスもだてに銀メダリストなわけではない。ダメージの大きい投げ技を積み重ね、スタミナに難があるブテネンをじわじわと攻めにかかる。とどめのSTFは「ここぞ」ということろで繰り出したため、ブテネンには跳ね返す力が残っていなかった。

トーナメント一回戦:福田雅一(レッスル夢ファクトリー) 対 正田和彦(現・MAZADA)

入場するなり、この日着ていたレッスル夢ファクトリーのTシャツを応援団にみせていた福田。師匠の仲野とともに夢ファクを背負って出てきた気概みたいなものを感じた。といっても無我のマットには団体対抗という概念はないので、単に観客へのお礼と自身に対して気合をいれるためだったのだろう。

対する正田も気合は十分。メキシコ流のラ・マヒストラルを仕掛けたり、積極果敢なタックルで、アマレス経験者の福田に対して一歩も引かないレスリングをみせていく。

プロ経験では上になる福田は、その正田の攻撃を上手にいなして、正田の体勢を崩していく。欲を言えば長身をいかして上から攻める攻撃パターンもみたかった。

とはいえ試合の大半は福田がコントロールしていたのはまぎれもない事実。そして、無我にあがることで自分が何を学んで持ち帰るか、という姿勢においては、福田もアレク同様貪欲だったといえるだろう。

両者とも大技に頼らないクラシカルで、それでいて白熱した好勝負を展開。大技らしきものは福田の水車落としくらいだった。大技は出してもひとつくらいというのが、無我の「共通認識」みたいだったが、この試合もそうだった。

最後は無我では必殺技として認知されているレッグ・スプレット(また裂き)で、福田がギブアップを奪って勝利。最後はお互いが張り手を出し合ってエールをおくりあった。いいライバルとして育っていってほしいと思う。福田にも学んだことがあると思うし、正田には自分が足りないものも明確にみえてことだろう。素晴らしい試合だった。

セミファイナル:仲野信市(レッスル夢ファクトリー) 対 倉島信行

倉島はもともとプロレスが好きではなかったそうだが、たまたまみた藤波さんの試合に感銘を受けて無我入りしたという選手。アルバイトと練習のかけもちという新日本隊ならありえないことまでしてデビューした苦労人でもある。

一方、新日本プロレスからジャパンプロレス・全日本プロレスを経由し、紆余曲折を経て現在はレッスル夢ファクトリーの師範として、若い選手たちを厳しく指導する立場になった仲野。

大会後のあいさつで藤波さんが「今回は胸を借りた」と発言した通り、この試合も倉島が仲野の胸を借りた試合になった。新日だからという上から目線ではなく、実力で上回るものから何かを吸収しようという場が無我である以上、至極当然のことなんだが、メジャーのプライドとかいうものを抜きにしてレスリングの道を追求するということでは、この試合もまさに無我らしい一戦であった。

仲野はおそらく夢ファクで後進の指導をしている時と同様に、倉島にも接していたように思う。何から何まで基本に忠実な試合だった。倉島がセミに抜擢されたことはそれだけ力を買われてのことだと思うけど、さすがにキャリアの差だけはどうにもならなかった。

メインイベント:藤波辰爾 対 石川雄規(格闘探偵団バトラーツ)

藤原組長の遺伝子をもつ石川は入場時からうれしくて仕方ない表情。広島で憧れの猪木さんと対峙した時は、石川を視界にいれなかった猪木さんを振り向かせようという情念のようなものを感じたが、この日はそういうのもない。実に晴れやかな顔をしていた。

ただ、石川に関していうと、情念みたいなものがないとやや物足りなく見えるのもまた事実。この試合では無我を意識したのか、スタンドでバチバチやりあうのではなく、ひたすら膝十字を狙っていく展開に終始。このあたりもやや「よそ行き」な感じがした。本来、藤原組長の系譜からいって、石川もグラウンドはお手の物なのだが、このあたりも面白いところである。

そんな石川の一挙手一投足を藤波さんは全て見通していたようだった。冷静に試合を展開し、要所要所をしめていくスタイルにはまったくブレがない。一通り石川の攻めを受けたドラゴンは腕十字狙いに。ここは石川が自身の手をつかんで離さない。

しばしこの攻防があったのち、石川の手を「バチ-ン!」という強烈な音のするキックではらいのけた藤波さんは、は腕十字を完璧に決めて見せた。同じカール・ゴッチの源流をもちながら、藤原組長とはまた違う決め方だった。たまらず石川はタップアウト。

終わってみれば実にすがすがしい大会だった。近年ただ騒がしいだけだったスターレーンの雰囲気まで原点回帰したかのようなそんな素晴らしい空間だった。無我の「なんたるかはやはり生でみないとわからない。知名度に頼らず、ひたすらレスリングを極めた者たちが集う場所として今後も無我は継続していってほしいと願うばかりだ。

にほんブログ村 格闘技ブログ プロレスへ

au公式/ビデオパス

-プロレスよありがとう!クレイジーでモンスターな好事家がマニアに捧げるメモリアルブログ, プロレス観戦記, プロレス観戦記復刻版

『FREEDOMS vs がむしゃらプロレス 対抗戦』