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[プロレス観戦記復刻版] 新日本プロレスSGタッグリーグ戦公式戦最終戦下関大会(96・10.31)

2018/07/03

新日本プロレスSGタッグリーグ戦公式戦最終戦下関大会(96・10.31)

小雨交じりの平日の夕刻。晩秋の風の冷たさよりも蒸し暑さを感じるくらい。これから観戦であるにも関わらず、どうも気持ちが盛り上がらない。とりあえずメッセ近くで軽く夕食。しかし客入りの思わしくない店内で、バイトの兄ちゃんとその後輩と思しき数人が、流れないトイレの話で盛り上がっていた。食事してるんだけどなあ・・・少し不愉快。

なぜ、イマイチ盛り上がっていないのか。それは博多でSGの大勢が決まってしまい、翌日の広島での優勝戦に進むチームはすでに決まったも同然だったからだ。つまり今回の公式戦は「消化試合」だったのだ。そのうえ、カードを見たらどれもイマイチなものばかりで、すっかりブルー入ってしまった。

「しょせん地方のカードなんてこんなものか」とあきらめ半分の気持ちですっかり覚めてしまったのだが、観戦機会も少なくなった折でもあるし、なけなしの金をはたいて買ったチケット代を無駄にもしたくない。何より見もしないで決めつけることはしたくない。

なんとか気持ちを切り替えて試合開始を待つことに。試合前にけが人が多いことが発表されていたが、そうでなくても地方は一枚落ちのカードをもってこられやすい。うがった見方をすれば、広島と博多のはざまにあって、最終戦に主力を先乗りさせたとも考えられる。

こうした格差をつけられて嫌な思いをするのはいつも地方の、それも田舎の人間なのだ。しかし、先ほども言った通り確かにカードは重要な要素だけど、実際に見てみないとなんともいえないのがプロレス。さて、この日の試合は・・・・

第1試合:吉江豊 対 斎藤彰俊

平成維震軍がらみの第一試合~第三試合までは、スタンド中心でラフ多めの試合。この試合もそうだった。だが、相手の吉江に覇気が感じられない。新日本らしい若手同士の意地の張り合いを見てみたかったのだが、比較的初心者が多かったように思えたこの日の会場にあって、反応もイマイチだった。

ラフ多めの試合も悪くはないのだが、吉江に覇気がないかったのは致命的。彰俊も納得がいかなかったのか、試合後フェンスを蹴飛ばして帰っていった。

第2試合:後藤達俊 対 安田忠男

安田は「燃えよ、荒鷲」で入場。正直、これは坂口征二さんのテーマなんで、どうも違和感がある。頑張っていないとは言わないが、テーマ曲負けしている感は否めない。

この試合ではちょっと面白いことがあった。どうも初心者らしい女性客が後ろの席にいたらしいのだが、いっていることがとにかく面白かった。

「いつも実況している人、来てないんだ」(どうも中継のあるなしに関わらず、いつも実況があると思っていたらしい)

「ねえ、あっちから出てくる人って、皆あんな格好して出てこないといけないの?」(反対コーナーの平成維震軍を指して)

「へえ、汗ってあんなに飛び散るんだ」(後藤と安田のチョップ合戦をみて)

・・・どうも試合より後ろの人の反応が面白くてなかなか内容が頭に入ってこない。困ったものなのだが、こうした反応は確かにマニアでは思いもつかない視点だし、こういう見方もあるんだなという点では逆に私が勉強させてもらった。

とはいえ、試合はあっさり安田が負けてしまった。最近はどうもデビュー戦当時の一生懸命さがなくなってきたように感じられてならないのだが。

第3試合:永田裕司 対 小原道由

この試合では永田の「プロレス頭」がいかんなんく発揮された。死んだふりをして相手の数歩先の手を読んだ、大逆転勝利をおさめた時は会場も大興奮。

二年ぶりの下関で、その時はいち若手にしかすぎなかった永田の成長が思った以上だったというのもあるが、非凡な才能には舌を巻かされた。まあ相手が先輩の小原だし、意外性という点でも驚きだったともいえるだろう。

ただ、もう永田が小原から一本取ってもなんら不思議でないというのも一方ではあったんで、会場の反応は私的にはやや意外だった。もう永田もヤングライオンではない。今後はこの日メインに出る小島や中西を出し抜くくらいの活躍をしてほしい。

第4試合:獣神サンダー・ライガー&エル・サムライ 対 大谷晋二郎&保永昇男

地方でありがちな「なんじゃこれ」的なカード。世代闘争でもないし、保永が大谷と組んでいる意図も見えない。だがふたをあけたらこれが名勝負だったからプロレスはわからない。一見すると意味がなさそうな大谷&保永だったが、保永が大谷のヒールの部分を引き出して、大谷を生き生きと暴れさせたのだから、これは儲けもんといっていいだろう。

試合の前半は新日流のグラウンドから入る基本的な展開。こういうのは本当を言うと第一試合でみせてもらいたかったのだが、さすがにこのメンツは体に染みついているのか、よく理解していると思った。こういうのを見ないとやはり新日本に来た気がしない。

ライガーは復帰間もないこともあってか、会場からは大歓声。地元・大谷の声援をも上回るほど。しかもノリノリのライガーは試合の中で常にいい展開に、もっていける流れまで作り出していた。ブランクを感じさせない点ではさすがというほかない。大谷も世代闘争で時折みせる気負いみたいなものがなく、余計な力が入ってないのがみてとれた。状況もよくみえているようで、保永との「悪役タッグ」を楽しんでいるかのようだった。

金本とかもそうだが、若い世代というのはどうしても一直線になりがちだけど、保永の狡さが加わるとこうも面白くなるものか、と感心させられてしまった。できることならこのまま正式に保永と大谷にはタッグを組んでもらいたいくらい息もあっていた。

この試合で特筆すべきは第3試合までのバタバタした展開ではなく、新日本らしい基本に忠実な流れが見られたこと。ジュニアらしからぬといえばそれまでだが、大谷を除けば空中戦主体の選手ではないから、当たり前っちゃ当たり前。

後半になると、保永がサムライとライガーを分断。リング上にはまだ余裕があるライガーと、ふらつき気味の大谷が残った。

だが、大谷はここから驚異の粘りをみせる。フィニッシュに向けて容赦なく畳み掛けてくるライガーの厳しい攻撃を全てカウント2でキックアウト。更には必殺技のドラゴンスープレックスの体勢に入るが、ライガーも必死にこらえる。ならばと、大谷はそこからタイガースープレックスに切り替えて、見事ライガーから ピンフォール勝ち!

この日のライガー・サムライには正直付け入る隙も見当たらなかったし、大谷も若さに任せていろんな技を出していたけど、要所要所を保永がしめたおかげもあり、大谷自身が試合を諦めなかったことも、金星に繋がったと私は思う。文句なしにこの日のベストバウトだった。

ただスタミナ配分に関しては他の3人に比べると明らかに見劣りしていたので、このあたりはキャリアを重ねていく中で自分のものにしていかないといけないだろう。ライガー、サムライ、保永は試合後息すら乱れていなかったから。

第5試合 藤波辰爾&佐々木健介&西村修 対 木村健悟&小林邦昭&野上彰

平成維震軍対正規軍の6人タッグ。やはり見所は無我師弟コンビと、かつてはドラゴンのタッグパートナーだった健悟との絡み。

しかし、こちらは第3試合まで繰り広げられたラフ一辺倒の試合に逆戻り。こうなると連携がとれている維震軍が有利。キャリアの浅い西村を捕まえていたぶる展開が続く。

こうなると無我の香りというものには期待できなくなる。結局本隊は健介が看板であり、藤波・西村は露払いでしかなかった。フィニッシュも小林のフィッシャーマンズスープレックスを切り返しての、ラリアット。そしてストラングルホールドをがっちり決めて、小林からギブアップ勝ち!

対照的な光景は試合後も続く。西村とは握手した健介は藤波さんとは目も合わせない。藤波さんも健介と一緒に勝ち名乗りを受けない、という感じで終始溝が感じられた試合だった。

第6試合 武藤敬司&リック・スタイナー対 ヒロ斎藤&デイブ・テイラー

かつて全日参戦時に、マスカラスとダッグを組んだこともあるヒロ斎藤。あの時もマスカラスを立てて試合をしていたが、この日もテイラーを立てるように自らロープをあげて、テイラーを迎えいれていた。これに気を良くしたか、テイラーは終始イヤミな英国紳士風キャラのヒールファイトで会場のヒートを買う。

その英国紳士テイラーに対して、武藤はヨーロピアンスタイルの引き出しを開けてきた。手四つからのじっくりした攻防で、テイラーのよさを引き出しにかかる。

まあ、リックに変わると試合展開がバタバタするのは仕方ないとして、武藤とヒロのおかげで、テイラーの地力の部分にもスポットライトが当たったのは幸いだった。ある意味無我っぽさが宿っていたのは意外といえば意外だった。

思った以上によい試合になったのは予想外だったけど、武藤敬司とヒロ斎藤が絡めばクオリティにハズレなしということは確かだった。

第7試合 蝶野正洋&天山広吉 対 平田淳嗣&飯塚高史

この日も飯塚には多くの声援が飛んでいた。しかし、いかんせん正規軍は即席コンビ感が否めない。かたや狼群団からの歴史がある蝶野と天山には、初期のような分裂しそうな危機感はない。

狙いを飯塚一本に絞っていたぶるだけいたぶり、最後は飯塚からピンフォールを奪う。維震軍もそうだが、この日はやはたらラフに走る試合が多く、勢いジュニアの試合や、武藤の試合が異質になり際立つ結果になってしまった。まあ、地方大会にありがちなことではあるんだけど。セミがこれだからなあ。

第8試合(メイン)SGタッグ公式戦
橋本真也&スコット・ノートン 対 小島聡&中西学

消化試合とはいえ、一応この試合に勝った方が決勝進出となる試合。しかしやっと若手の位置から脱したあたりの小島と中西に対して、相手はバリバリの一線級である橋本とノートンである。分が悪いなんてもんじゃない。

後で知ったことだが、前日の博多大会で小島がマイクを持ち、橋本に戦線布告をしたらしい。パフォーマンスとはいえ、本気で決勝を狙うと宣言した以上、ただではすまない。しかし、小島と中西はあえて茨の道を選んだ。

試合が始まってみると、やはりトップの壁は恐ろしく厚い。小島や中西がいくらせめても相手チームにダメージが与えられない展開に。ぶつかっては跳ね返され、ぶつかっては跳ね返されしていく内に、小島や中西から必死さがでてきた。とにかくいい格好しようとか、パフォーマンスに走ろうとかするのではなく、ただただ強大な敵にぶつかり続けるという足掻きに似た必死さ。そこからはひたすらに「勝ちたい」という本気さが伝わってきた。

あたかもヤングライオン時代に逆戻りしたかのような展開は、橋本とノートンが一切格下扱いしなかったことで、より顕著になったのだ。最初は判官贔屓だった会場もいつしか純粋に小島組の頑張りを後押し。気がつけば消化試合どころか大熱戦になった。

終盤では橋本の顔面は血に染まり、ノートンの表情も余裕が消え去っていた。最後こそ橋本組の軍門に下ったものの、まさに優勝戦進出チーム決定戦にふさわしい素晴らしい試合になった。これだからプロレスはわからない。

メインの真っ向勝負の余韻の中、帰路につく観客たちは口々に「いい試合だった」と満足そうだった。入り自体はそんなによくはなかったが、終わってみれば全てよし。この日のMVPは文句なく小島聡と中西学だったと思う。

格の違いに対して必死でそれを壊しにきた若い二人の姿に私も感動した。結果は予想通りとはいえ、激しく心を揺さぶられた。これだからプロレスはやめられない。

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